908 シコタンタンポポ

シコタンタンポポ昨年はこの場所には一株も確認できなかった。2015年には10株ほどあったが、その後見つからず、今年はこの1株だけ。ほぼ同じ場所に復活してくれた。シロヨモギ、ハマエンドウ、ハマヒルガオ、コウボウムギなどの海浜植物に混じって、海の飛沫のかかる場所に咲くニホンタンポポだ。この時期、トッカリショ、マスイチなどの海の断崖にもしっかりと根を下ろしている。

907 イタンキ浜を歩く

イタンキ浜大潮ではないが十分に潮が引いていると考え出かけた。今日の満干差は130㎝。新緑と室蘭層の白い断崖が砂地の水面に映っている。この崖は700万年も前の海底火山から噴出した火山灰や礫が海中で堆積したものだ。日本海ができ、日本列島の形が形成された頃のことだろう。この浜辺を裸足で歩く。地球を愛おしく感じながらどこまでも歩く。

906 やすらぎの家

2000年噴火泥流2000年3月31日の噴火開始から1週間ほどして、金毘羅山に開いた火口からの熱泥流の噴出が最大となった。やがて熱泥流は流路工にかかる二つの橋を押し流し市街地へと溢れ出た。   ここは手前から向うへ家具が一瞬にさらわれた町営浴場「やすらぎの家」の休憩室。柱や天井に泥流の飛沫が残っている。余勢を駆った泥流はその下の洞爺温泉小学校の校舎を突き抜け、湖岸にまで達した。

噴火遺構として残された「やすらぎの家」の壊れた窓の向こうには、若葉が萌え、青く澄む湖水と雄大な残雪の羊蹄山が望まれる。小学校は隣の月浦地区に移転し、用地は洞爺湖ビジターセンター・火山科学館となった。火山としてはごく当たり前の噴火という自然現象と、それに対応してゆかねばならない私たちの生活がある。自然との折り合いの付け方を考えさせられる。

905 珠ちゃん火口

珠ちゃん火口洞爺湖温泉に続く住宅地「木の実の沢」は1977年噴火で被害を受け、さらに2000年噴火には断層面に沿って「有君火口」「珠ちゃん火口」などが開いた。この火口は最後まで噴泥を間欠的に吹きあげ、空震をともなっていたが、現在では湿地となっている。アシと共にドロノキ、シラカンバ、ヤナギ類が成長していて、あと10年もすると温泉街や湖、羊蹄山は隠されてしまうだろう。

903 岩手山火口

岩手山火口千歳、羽田間のジェットからはいくつもの火山を見ることができるが、写真に残せるチャンスはあまり無い。今回は岩手山の火口が良い角度から撮れた。手前は最東端の岩手山(2088m)の火口、すぐ向こうの御苗代(おなわしろ)湖はまだ氷結したままだ。東西に長いこの火山は、現在やや静かだが、激しい噴火活動をしてきた火山だ。どの火山も輪郭の崩れていない火口を見ると、気を抜けないな、と思ってしまう。

902 クワの実

クワの実相模川中流の土手を歩いていたら、足元一面、クワの実が落ちていた。手を伸ばして枝をひき寄せる間にも柔かい実は落ちる。この地方は昔から養蚕が盛んだった。店にも出ず保存もきかないから、懐かしい味をと思っても通りすがりに摘み取って食べるしか手はない。ほのかに甘く、ジャムにすると鮮やかな紫色と、種子の感触が個性的だ。ヨーグルトやアイスクリームとベストマッチ。マルベリーの名で流通している。

901 自然な石器

落として石器

田名向原遺跡。旧石器時代の住居遺構の資料を調べに出かけた。遺跡下の相模川の河原でボランティアさんたちが、変成岩のホルンフェルスの手ごろな石を台石に落として、子供たちの石器学習の石斧の材料を作っていた。幾度も落として得られた剥離片を見せていただいたが、石斧に転用できる見事な剥片がいくつも得られていた。

ナッピングによる技法ではない。より自然に得られる石器だ。ヒトの日常はこんなものだったのだろう。原礫面も残っていて、結果だけ見たら人工物なのかどうか迷ってしまうね。たしか、旧石器の金取遺跡の石斧もホルンフェルスだったね。暮らしの中で生活と向き合うヒトの姿が浮かんでくる。

 

900 輝く緑

緑の昭和新山一斉に樹々の新芽は芽を吹いた。昭和新山の赤いドームを包み込んで、軟らかな緑の風が吹く。鳥は歌い花は開き、生き物すべてのいのちが始まる。若い葉は虫を誘い、林床のコケは膨らんで地虫は蘇る。70年たってこの山は、より深い森へと歩み出す。ハリギリは太くなり、ミズナラも増えてきた。ミズキはぐんぐん成長しホウノキも健やかだ。50年後の深い森と赤いドームを想像する。

899 やはり羊蹄山

羊蹄山手前のトドマツ林、青く落ち込むのは洞爺湖の水。湖の中央にある中島にも緑が蘇った。中島もいくつもの火山の連なりだ。その向こうに残雪を抱き、五月の空に聳えるのは我らが蝦夷富士、羊蹄山。古羊蹄の上に溶岩流出と爆発的噴火を繰り返し数万年で秀麗な山容となったという。山頂には1万年前の複数の噴火口が並んでいる。何処からも見え、誰もが見上げるこの地のあるじ羊蹄山。

898 室内のサクラ

室内のサクラ有珠山西山山麓の噴火口から600m離れた旧洞爺湖幼稚園。噴石で穴の開いた天井からの雨と窓からの光を得て若いサクラに花芽が付いた。小鳥の糞からの発芽だろう。光を求めて窓から伸びた若い枝は、落ち葉を貯めて腐った床を土壌に置き替え、すくすく育って青空へ向かう。白い花で、カスミザクラだろうか。数年もすると、室内から枝を伸ばしたサクラを外から見物できるだろう。