220 生き残ったセンノキ

ハリギリ(センノキ)昭和新山を見上げる洞爺湖湖畔にハリギリ(センノキ)の大木がある。胸高直径1mになんなんとする威丈夫だ。1944年、激しい噴火を繰り返していた昭和新山の7月11日、第3火口からの第5次爆発は強烈なサージを伴った。三松正夫の「昭和新山生成日記」によると、

「この噴煙は北方洞爺湖畔部落に押し倒し、猛烈な熱雲となって地上を渦巻き、火口より湖岸まで2km、幅1.5kmの農地と、十数戸の農家に大損害を与え、湖畔の保安林を倒してさらに湖中に吹き進み12kmの対岸洞爺村に達し、「向洞爺」の農作物に大害を与え、午前11時25分間歇爆発となった。爆発途中より大雷雨となり、噴煙は粘性高き泥雨と化し、万物に付着したため、植物に致命的大害を与えた。噴石もまた多く、径20~30㎝の大石が火口500mに飛び、字西湖畔大寺寅吉氏宅3棟は熱石により焼失した。熱雲は湖岸樹林の半面を焼いたが、その温度は60℃内外と思われ、途中避難した農民は軽い熱傷を受けた。熱風は地上の砂礫を吹き飛ばし、これが窓ガラスに銃弾貫通孔のような穴をあけたり、磨りガラス(ママ)のように暈を付けた」

と、昭和新山の噴火の凄まじさを物語る記録として残されている。無くなってしまった湖畔の保安林は、現在、後に植林されたトドマツの並木となっているが、その中にこのハリギリのように何本かのたくましく生き残った大木を見ることが出来る。

219 縁あってこの地に

コタニワタリコタニワタリ。谷の湿った空間をあちらからこちらへ、適した環境ならばそこで命を繋ぐ。胞子は縦横無尽、風に乗り水に流れて至る所に漂着するのだろうが、そこを終の棲家とするための因子は何なのか。日本海側に偏る分布は積雪に関係するのであろうか。雪が積るから越せるのか。昭和新山の然もありなん場所で見つけたが、有珠山にも洞爺湖中島にも室蘭にも分布する(原松次、尾崎保)。常緑の単葉シダ。

217 フキノトウ

フキノトウフキノトウが開いている。その向こうは雪の下で倒れていた麦の茎が陽を受けて続き、遠景は有珠山と昭和新山。風は軟らかく、枯れ草と土の匂いがする。三月そして四月、雪の下で待ちに待っていた生きものたちが一斉に蘇る。どこかでヒバリの声がする。懐かしい緑の季節の到来だ。ここは伊達市から壮瞥の立香へ続く丘陵、有珠山、昭和新山を見渡すには第一級の場所だ。

216 剪定作業

剪定作業必須アイテム我家のサクランボウとリンゴの選定作業が始まった。合わせて30本の内、半数は太い樹なので脚立に上っての作業となる。晴れ、時折吹雪、風あり、気温は10℃くらい。毎年のことだ。残りの作業はブドウ、プラム類とハスカップ、ラズベリーなどの低木で気が楽だ。近くの専業果樹園さんはあらかた作業を終えている。あとひと月ほどでこの町は、大地も樹木もとり囲む山々も、すべてが花でおおわれる。

215 いのちの「ミウラ折り」

ルバーブ根雪のとけた跡でルバーブの新芽を見つけた。縮緬模様のたたみ皺そのままに、満を持しての登場だ。燃え立つ炎のような春の色はみなぎるエネルギーを与えてくれる。このたたみ皺、よく見たら「ミウラ折り」だ。二重波形可展面という展開様式のみならず、可展面そのものが湿った土の下の新芽という微空間の中で、自律的に自己形成された所にすごさがある。時空を折りたたんだ四次元的所産だ。「大黄折り」。知的財産権・意匠権はダイオウ=大黄にあり。

212 約束

フクジュソウ今年も咲いてくれました。フクジュソウです。信義を守り、申し合わせ通りにリンゴの樹の下で一杯に花弁を開いています。陽光のエネルギーをとらえ、パラボナ集光器でアロマを気化させては、この時期少ない虫たちの眠っていた嗅覚を呼び起こすシステムをここで見つけました。あと一週間もするとクロッカスが、すぐプリムラがあとを追って、そうするとこれまた約束通り、トガリアミガサタケの収穫だ。忙しくなるぞ。

211 不本意なれど

クズ防除夏、冷えた葛餅を食べると昔の思い出が蘇る。生姜の香りの葛湯は私の大好物。太い根からでんぷん粒子を洗い出し厳しい手わざの挙句作りだすのが葛粉。されどここはジオパーク。火山灰の堆積を保存する露頭にクズは大敵。北国へやっと繁殖の糸口をつかんだクズにとっては不条理な話だ。昨年イソプロピルアンモニウムなる物質を主成分としたピンを打って駆除することにした。発芽を抑えらたであろうか。甘い赤紫のクズの花の匂いをおもいだす。

 

209 此処ならば

アルトリの磯向こうに残雪の有珠山が望まれる。ここアルトリ岬は7000年ほど前、有珠山の山体崩壊で流れ下って海へ突き出した流れ山だ。有珠山を構成していた岩石はここよりはるか沖合まで流れ落ち、海底の岩礁を作り潮間帯では磯となった。岩礁は海藻を育て多様な生きものたちを育んできた。近くに伏流水の泉もある。マガキとフノリのおいしい感触が手に伝わる。ここでならば縄文の昔、私もなんとか暮らせる、と思った。どのような生活だったのだろう。

200 春を撃つ

エゾノキヌヤナギ 陽のあたる雪原を背に、苞を脱ぎ捨てたばかりのエゾノキヌヤナギの雌花。和毛が残雪の照り返しを受けている。ヤナギ類の同定はなかなか難しいが、枝先に辛うじて残った、全縁の細い葉がキーポイントになった。この春もまた、小さく軟らかなトリガーを誰かが引いて、この枝先から春が打ちだされる。連なった花序は連射砲。少しだけ見せた青空の下、まだ雪を乗せている大有珠から吹く風の中に春の匂いがする。

198 リンゴの目覚め

リンゴ園 東北、北海道は今年、大雪の話題で持ちきりだ。だが私の住む町、壮瞥はこの通り50cm位の積雪で、いつもとさほど変わり無い。この果樹園、左から右へ4列はリンゴ右はサクランボウ。果物の町壮瞥はこのような果樹園がたくさんある。3月に入り、雪が締まって来ると枝打ち、剪定作業が始まる。4月半ばにはすべて終え、新芽を迎える。