770 緑なす

新山噴気昭和新山ドームの噴気が光る。厚く暗い雲を背に、切れ間から一瞬光が漏れて緑が輝いた。1945年に噴火が収まって72年。手前の森は屋根山のドロノキの群落。寿命は100年位だから壮年~老年期の森。遷移が進み樹種が交代して次にはどのような森に至るのか。隣り合う若いヤマナラシの林はどんな経過をたどるのか。50年先のこの山の緑を想像して見るが予測がつかない。私もいない。

764 汗の石

汗の石明治初期十勝の平原に開拓の手が入って、計算すると130年。十勝川や音更川の流域を肥沃な農地にするには原始林に手を入れることから始めた。伐採、抜根、運搬、馬、農器具、操る人達の筋力と汗。 音更川近く、どこまでも平坦な農地の境目に、累々と積み重ねられた礫の山を見つけた。耕すたびに地表に現れるこぶし大から枕の大きさまで。この平野が氾濫原だった証しでもある。

763 収穫へのキャンバス

黒い大地柔らかな陽ざしを受け止め、黒い大地はエネルギーをため込む。使い込まれ、豊かな滋養をため込んだ土壌は、馥郁とした蒸気となって昇華する。いのちを育むまさしく温床。北の穀倉十勝平野に播種の季節がここに始まる。樹々は芽を吹き、カワラヒワもやってきた。さあ、これからが農家の腕の見せどころ。経験と汗で豊饒を創りだす、黒くて真っ平ら、地平まで続く大アトリエ。

761 クサソテツ(コゴミ)

コゴミワラビもゼンマイもシダ類だが、コゴミはあくがないので食べやすい。日陰に強くやさしい葉が好きで、植えておいたら地下の匍匐茎でたくさん増えた、春を食べるのだ。茹でると色とリズム感のある姿が新鮮で、白い大皿に映えて名脇役だ。この時期旬のサクラマスにアレンジしたら極上の一品。散歩途中でいくらでも摘めるお手軽野草。フキノトウ、タラの芽。田舎暮らしは贅沢だ。

756 壮瞥穴 2017

壮瞥穴「うちの畑に穴が開いた」松本さんからの知らせ。雪を残す有珠山を背景に、耕作前の広大な農地に案内されると在りました、見事な壮瞥穴。地表部は80×90㎝、50㎝下に穴の本体があって直径35×30㎝、深さは240㎝だった。一昨年は私の裏庭にも開いて学生を連れた先生もやってきた。過去に生育していた大木が噴火堆積物に埋没し、腐植して空洞になったものだ。

750 アカゲラの春

アカゲラの春雪が少なかった分地中深くまで凍てついていて、土に埋もれていたサクランボの古い薪を掘り起こすのに苦労した。上に積み上げて置いたら、目敏く見つけたのが雄のアカゲラ。この冬は一度もやってこなかったのに、何を目印にここに辿り着いたのか。腹が空いていればこその、しかしあたり前の鋭い感性で、長いくちばしで朽ちた材を弾き飛ばしている。春の光のなかの眩しい命。

745 残雪のホロホロ

ホロホロ山三月末、有珠山からのホロホロ三山。左から徳瞬瞥山(1309m)、ホロホロ山(1322m)、1260m峰。春めいた雲の下、たおやかな山脈は山好きにとって蠱惑的に見える。徳舜瞥山は思ったより登りやすく、自然を楽しみながら山頂へ、さらに奥のホロホロまでは片道3時間。一日楽しめるコースだ。三山含めて大きな火山だ。白老あたりからの室蘭本線の車窓からも美しい。

743 大岩塊、昭和新山ドーム

昭和新山ドーム熱気の残る昭和新山ドームは降った春の雪を溶かし、水気は溶岩表面を覆う天然煉瓦に滲みこんだ。緑のない岩石の地肌はいやがうえにも赤く、有珠山ドームの輝く雪と対照的だ。あと二月待って五月の風が吹くと、小さな草地も回復し、岩山は柔らかな新緑に覆われる。今年は有珠山 (733m) に登れるだろうか、昭和新山の頂上 (398m) に立てるだろうか。壮瞥町立香から300㎜で撮影。

739 トドマツの球果と種子

トドマツの球果と種子トドマツはモミ属 (Abies) で、トウヒ属 (Picea) のエゾマツのように松毬が落下しないから球果の入手が困難だ。倒れたトドマツ(ブログ678)の松毬を得て、壁に下げて置いたら触れただけでサラサラと砕け落ち、錆釘のような果軸が残った。種鱗、苞鱗の形態からするとアカトドマツらしい(北海道主要樹木図譜、宮部・工藤・須崎、1986)。翼のある黒い種子の長さは8㎜。

737 クマゲラの食痕?

クマゲラの食痕伊達市大滝の沢筋を数百m登りキツツキの食痕を見つけた。大きさからみてクマゲラだろう。径30㎝のカラマツに二つの食痕。よく見ると芯材が腐植している。外見から中身は分からない。叩き音から判断するというが、それは鳥に聞くしかない。以前、我家の窓にぶつかって死んだヤマゲラの舌は驚くほど長かった。強靭な嘴と長い舌。樹の中の虫たちにとっては最強の天敵だろう。