882 芽生える

スイセンの芽生え雪が溶けると水仙の芽がここまで育っていた。一個ずつ独立した球根なのに、誰かに声かけられて一斉に眼が覚めたみたいに。季節を感じるシステム、休眠から成長へと切り替える機構は何なのか。個々を連携するフェロモンなどが存在するとは思えないし。蒔いた種子が一斉に解発されて芽を出すのも同じことなのだろう。私は季節の生き物に従い、季節に引きずられて生きている。

878 Spring ephemeral

フクジュソウ根雪が溶けかかった時にはもう咲く準備完了のフクジュソウ。庭のリンゴの樹の根本で毎年咲いてくれる。春になったから咲くのではない。季節を先取りしての御目見えだ。厳冬期に目覚め、花芽も茎も硬い氷のなかから夜明けを窺がっていた。明日は黄金色に輝く花冠を満開にして、熱と匂いで虫を誘い、花粉を運ばせる。春の妖精というが、死んだ雪女の忘れ形見なのかも知れない。

877 誘われてカミキリ

イタヤカミキリ数日前、陽の当たる工房の天井を何かが飛んだ。次の日に食卓の上の梁で見つけ、愛用の図鑑「札幌の昆虫」でイタヤカミキリと同定した。どうやらストーブの横に積み上げた薪から目覚めたらしい。雪のある裏庭の薪置き場にはまだ戻せない。急遽、腰高シャーレにビオト-プを拵え、砂糖水で濾紙を湿らせて置いたら、うまそうに口を付けた。あと一月、付き合ってみよう。

876 早春の頂

早春の昭和新山青空の下、有珠山山頂(733m)を背景に昭和新山のドーム(368m)がひときわ赤い。土壌を焼きあげ、天然煉瓦を纏いながら成長し、まだ地熱を蓄える岩体はいつもこのように春を迎える。樹々の芽吹きはまだだが、枝先の色はもう十分に柔らかだ。今年はどのようにこの山とつき合って行けるのか。植物、岩石、調べたい場所、写真に残したいことがらが沢山ある。

872 奇妙な均衡

均衡と連携裏庭のサクランボの古木に吊るした手製の餌台。ペットボトルにあけた餌の出口は1㎝×5㎜。山の餌がなくなる時期なのか、シメが3羽、シジュウカラは雄雌合わせて3羽、スズメは10羽程が来ている。嘴の太いシメはたまにしか餌を取り出せず、食い残しや落ちてくる餌を待つ。スズメはいくらでもつまみ出し、辺りに弾き飛ばすが、ヒマワリの種子は硬くて完食できない。シジュウカラは名調子で鋭い嘴で食い散らかし、スズメとシメはそのおこぼれを頂戴する。この三者、とくに仲良しではないがいつも同時にやってくる。互いに暗黙の連携ができていて、自ずから均衡がとれている。

871 雪が降って

雪化粧3月になって二日続きの大雪。毎年こんな感じだ。サクランボの庭一番の古木もこの通りの雪化粧。北へ車で30分の大滝町では積雪量が2mを超えたとのこと。 風が強く停電もあり、見舞いの電話まで来たが、我が町壮瞥はいつもの冬より少し多いくらい。雪が締まって固まったら、果樹の剪定作業だ。青い空を見ながらの仕事は気持ちが良い。それにしてもこの雪、静かできれいだね。

870 ピータン甕ビオトープ

アラゲコベニチャワンタケいつもは庭置きでバイカモが増え、ウキゴリ、ヨシノボリ、ドジョウ、モノアラガイを飼っている。アメンボもトンボもやってくる。コケボールにはハコベ、ヨモギなどが生える。冬は室内に入れキンギョ、オリヅルランで楽しむ。根元に赤い平らなキノコが生えきて、調べたらアラゲコベニチャワンタケ(粗毛小紅茶碗茸)。驚いた、周囲にまつ毛を持った赤い小さなチャワンタケだ。

866 リンゴはえらい

リンゴの光芒

10月末に収穫した「ジョナゴールド」「早生フジ」を氷点近い地下室から食卓へ。四か月たって水分が抜けて皺皴になってはいるが、甘さも香りも充分残り、色を失わずに旨そうな光芒を放っている。 もぎ取った時の鮮烈な香り、弾ける食感こそなくなったが、このくらい齢をとると角も主張もうまくとれてしまって、口中に美味しさが素直に広がり、そのまま心に馴染んでゆく。 リンゴを植えていてよかった、と心からそう思う。

858 雪の足跡

雪の足跡壮瞥滝下、沢伝い水伝いに続く足跡。キタキツネと、カルガモだろうか水かきの付いた四角い足跡もあった。連れ立って歩いたとは思わないが、雪の様子からして昨日から今日のことだ。すれ違いがあったかもしれない。少し上流には羽毛の散らばった古い修羅場の跡もあった。陽の光も強くなっているし、湧水際の緑の草の色もある。やがて来る春へと繋がるいのちの脚跡。

855 スギとトドマツ

スギとトドマツ壮瞥川が昭和新山に遮られ、新山沼になるあたり。写真中央の褐色がかった針葉樹がスギの林で、その下にはシラカバ。その上の濃い緑がトドマツ。スギ林は道南にかけて多くなり、ここ以北はトドマツ林が多い。その分かれ目がこの辺りだ。春ともなれば本州ではスギ花粉のニュースで賑やかになるが、北海道ではシラカバの花粉アレルギーが話題になる