663 トッカリショ

トッカリショ室蘭港の裏側にこんな風景があるのをご存じだろうか。トッカリショは太古からの自然と人の生活が織りなす第一級の風景(ピリカノカ)だ。トッカリとはアザラシのこと。草地の下の断崖は海底火山の噴出物の堆積でできた室蘭層でイタンキの白い岩壁とつながり、成分の違う凝灰岩の層が傾斜していく層にも重なっている。小さな浜には何代も続く漁師たちの家がある。

私たちは工業を振興し港を盛んにする中で、このような美しい風景を捨ててきた。いくつものアイヌの伝説を伝え、人々の心に安らぎを与えてきたオイナオシ、オハシナイ、祝津(シュクズシ)、エトモの海はすでになく、電信浜、ポンモイの海岸は姿を変えた。砂浜は埋められ、岬はコンクリートで囲われてしまった。トッカリショに続くイタンキの浜が、海辺の生き物や鳴り砂の浜を守るという人々の熱い思いで守られているのが救いだ。

オイナオシの浜に続く栽培水産試験場が造られた場所は、豊かな海藻とスガモの藻場のある岩礁地帯であった。海の生物たちの揺籃の場を破壊して造成された施設は、祖先から譲り受けたありのままの多様な生態系をどのように補えるのだろうか。埋め立てでできたMランドという名の堤防の先は、いままさにピリカノカ・マスイチの絶壁を窺がっている。

 

639 春メバル

春メバル北国の遅い春。遅ればせながら旨い味も季節に乗ってやってくる。魚屋でメバルを見つけた。エゾメバル。こちらでは「ガヤ」という。味の濃く北海道の魚の名の通った範疇ではさほどちやほやされず、前浜の魚として食卓に上るくらいだ。しかし、その新鮮な味はかなり上等、腹子がハラハラ漏れて煮あがった一品は旨み食感、極上そのもの。その上、4匹1パックで390円。住むなら田舎。北海道へおいでよ。

 

624 サクラマスのマリネ

サクラマスのマリネ旬のサクラマスはヤマメの親。高級魚なのだがこの界隈では三枚におろした大きな上身が600円くらいで魚屋に並ぶ。塩で締めてやはりご当地自慢のシロハナマメとで主役二人の豪華版マリネを作った。モルトビネガーはそのまま穀物酢、歯触りと色取りの良い脇役の野菜を添える。スパイスは多めのブラックペパー、ハーブミックスと鉢植えの月桂樹。ワインかな、それとも日本酒?

602 棒鱈の世界

スケトウダラ小さな漁港の小さな家の小さな窓にスケトウダラが干してある。タラコ、白子を取った後、こうやって自家用に凍結乾燥する。凍りながら寒風に曝されて干せて行く。昔からの間違いなしの漁村風景。叩いてむしって食べるのが手っ取り早いが、煮物の鍋の中で他の具材と旨さの相乗効果を生み出す。熱帯を除けば世界中に棒鱈の煮物がある。マダラと共に世界の近世の食を支えた魚だ。

581 時代

ポロモシリ今は大黒島だが、ひときわ目立つ島なのでポロモシリ、左に尖って見える岩は小さいのでポンモシリと知里真志保・山田秀三の「室蘭市のアイヌ語地名」にある。1796年にやってきた噴火湾(Volcano Bay)の名付け親のイギリス人W.R.ブロートン(プロビデンス号船長)は船員オルソンをここに葬り、オルソン島という名もある。北千島にはブロトン島(武魯頓島)があり時代を物語る。

室蘭の基盤は数百万年前の海底火山の堆積(室蘭層=イタンキの白い崖)で、そこに溶岩が貫入し、岩脈はやがて残ってイタンキの岬、地球岬や測量山などとなった。安山岩の岩脈でできていた秀麗な母恋富士は採石のため削られて姿を変え、孤島だった大黒島は室蘭港の防波堤に取り込まれてしまった。時代と共に地形も地名も変わってゆく。

580 鈍色の風景

崎守の海冬も間近な室蘭市崎守町の海。北西の強い風に波がしらが吹き千切られる。防人の海なのか。

海鳥はオオセグロカモメとウミネコ。海が荒れるとここではいつもこんな風景。ちぎられた藻屑の中に餌でも見つかるのだろうか。

568 小幌洞窟、海鳴りの祠

小幌洞窟11月1日、ジオパーク友の会では小幌駅存続応援企画として26名参加の小幌洞窟探索会を行った。洞窟は標高50mの小幌駅から800m小道をたどった海岸にある。駅直下の文太郎浜へも足を延ばし、帰路の列車を待つ間の大発生の雪虫の中、小幌駅の由来も学び、晩秋の軟らかな日和の中、たっぷりと時間をかけて小幌の自然と歴史を楽しんだ。礼文駅11:27→小幌駅11:35(230円)、小幌駅15:40→礼文駅15:46。

海底火山の堆積物(ハイアロクラスタイト)にできたこの海蝕洞は静狩駅と礼文駅間、約10㎞続く断崖の海岸線の中間にある。古い時代から人々が立ち寄り、住んだ形跡が縄文晩期2500年前にさかのぼるという。1663年の有珠山噴火の直後にこの地にやってきた円空が彫った円空仏も、今はレプリカだがこの岩屋に残されていた。1791年には菅江真澄も立ち寄り紀行文が残っている。近年になっても近隣の漁師たちの船魂参りが行われていて、数千年、潮騒の中で人々の生き様を見守ってきた岩屋である。

563  クジャクシダ

クジャクシダ茅部郡森町の山の薄暗がりで可愛いシダを見つけた。Adiantum (ホウライシダ属)。園芸店のアジアンタムはよく知っていたが、種こそ違え北海道に自生するこのクジャクシダもアジアンタムだったとは驚きだ。細かい葉の清涼感がうり物の園芸種は熱帯アメリカ原産だという。だがこのクジャクシダの方が日本の気候で育ち風情もある。赤褐色で光沢がある細い葉柄がまたいい。

514  鷗の家・マスイーチセートマリ

マスイ・チセ・トマリ急な斜面を下りてマスイチの磯に立った。鷗の家(マスイ・チセ)の入江(トマリ)。向うの立岩に鷗の巣がある。忘れられたこの浜までの道は荒れていて、小さな砂浜はハマヒルガオやハマエンドウの絨毯となっていた。半世紀以上前、遠く渡島駒ヶ岳の見えるこの入江で、泳ぎ、潜り、釣りをして一日を過ごした。独りのことが多かったと思う。風景はまったく変わっていない。

504  有珠善光寺

有珠善光寺開基は826年というから、北海道では珍しい古刹である。文化元年(1804年)、様似の等澍院(天台宗)、厚岸の国泰寺(禅宗)とともに建立された蝦夷三官寺のひとつでもある。1882年の有珠山噴火では辛うじて難を逃れた建物である。7500年前の岩屑なだれでできた流山地形に囲まれ、有珠山溶岩の配置があたかも石庭のような趣を見せる。