246 海蝕洞

海蝕洞海蝕洞を見つけた。静狩・礼文の中間点。ハイアロクラスタイト(水冷破砕岩)と思われる岩盤の割れ目に沿って浸食が進んでいる。面白いことに崖の上から植物が下りてきている。陸上の草本と海中の褐藻類がこんなに間近に存在している。近くのタイドプールには海草のスガモも。豊かな生きものの世界が太古のままに、ごく当たり前に存在している。この自然の在りようを私たちは大切にしなければならない。

245 棲み分けて

潮間帯秘境の駅「小幌」下車、小幌洞窟遺跡と自然を探る観察会に参加した。みどり香る初夏の小幌海岸、大潮の海は水位が下がっていて、潮間帯の観察にはもってこいの一日となった。潮間帯上部のムラサキインコ、その下部のイガイのすみ分けラインがとてもはっきりしていて、それに伴って生育する生物群集がよくわかる。潮上帯、飛沫帯の生きもの達、潮下帯のワカメ、コンブなどの褐藻類も含め、海の生きものの世界でもここは秘境である。

241 エイノランノウ

エイの卵囊ふふふ、エイの卵囊です。今これを見てすぐに正体を明かせる人は少なくなりました。数十年前、外海の砂浜には流れ藻と一緒に打ち上げられて、よく見かけました。エイ(カスベ)はサメの仲間で、革に似たキチン質のケースの中に鶏卵とそっくりな卵が収まっています。これは室蘭のイタンキの浜で見つけたものです。潮騒も遠くなって、海辺は人々から忘れ去られようとしています。流れ寄る貝殻も少なくなりました。長さ約10cmの命の証し。

236 秘密の花園

豊かな磯室蘭の外海の海岸線は地形にしても生物の棲家としても実に多様で、植物、動物の種類も豊かだ。まさしく豊饒の海である。だが残念なことに、人の手が入るとたちどころにコンクリートで埋め立てられ波消しブロックが入り、おまけに育苗、栽培漁業と銘打って味気ない海に変容する。自然の磯や浅海が生態系を支えるもっとも優れた揺籃の場だというのに。じり貧の海が迫る。

235 世界最大の

オオバンヒザラガイCryptochiton stelleri (Middendorff, 1846) これが学名。8枚の貝殻を持つ貝類の腹面がこれ。標準和名はオオバンヒザラガイ。地方名「ムイ」はアイヌ語の「蓑」の意。アメリカではGumboot Chiton(ゴム長ヒザラガイ)。下北半島から北海道、千島、アラスカ、カリフォルニアまで分布する環北太平洋種。30cmを超すという。この貝との付き合いは長いが北海道では20㎝止まりだ。食用にしたと云うが美味しくはない。

234 ペシポクの穴

ペシポッケの穴知里・山田「室蘭市のアイヌ語地名」(1960)に「ペシポク」「ペシポキ」「ペシポッケ」(Pespok;Pesipoki;Peipokke)以上いずれも使われた。語源は崖の下、の意とある。この浜でたまたま出会った漁師に聞いたら「ベシボケ」。「あ、ペシポッケ」と聞き返したら、「そうだ」とのこと。「で、あそこの洞窟は?」「ベシボケの穴」。私(撮影者)の後ろにも出口がある巨大な洞窟。詳細は秘密。

219 縁あってこの地に

コタニワタリコタニワタリ。谷の湿った空間をあちらからこちらへ、適した環境ならばそこで命を繋ぐ。胞子は縦横無尽、風に乗り水に流れて至る所に漂着するのだろうが、そこを終の棲家とするための因子は何なのか。日本海側に偏る分布は積雪に関係するのであろうか。雪が積るから越せるのか。昭和新山の然もありなん場所で見つけたが、有珠山にも洞爺湖中島にも室蘭にも分布する(原松次、尾崎保)。常緑の単葉シダ。

213 海からのおくりもの

イガイスーパーで手ごろな大きさのふくよかなイガイ、7個入って398円。春は海からやってくる。ラベルには昔からの「ひより貝」と表示されていた。標準和名は「イガイ」で、老成した個体では十数㎝となる。北方種の「エゾイガイ」さらに大きくなり、ヨーロッパ原産の通称ムール貝(一般的にはムラサキイガイを指す)は一回り小さい。白ワインで蒸したが、味は濃厚で海の香りが口いっぱいに広がる。一つの貝から何と小さな真珠が7個も出てきた。春から縁起がいいね。

210 胡瓜魚

キュウリウオ字面からはどんな魚が想像できるだろうか。私の好きなキュウリウオ。理由は新鮮なきゅうりの匂いがするから。生臭く青臭いこの匂いが大好き。しかし野菜のキュウリは大っ嫌い。900円で3パック15匹を買ってきた。長さ30㎝の優れもの。部屋中にきゅうりの匂いを充満させながら一夜干しを作る。これがまた旨いのなんのって。淡白で味わいがあり、白身の香ばしさは、あヽ、、クラクラする。アイヌ語で「フラルイチェプ」は匂いの強い魚の意。ここの海の至宝。

209 此処ならば

アルトリの磯向こうに残雪の有珠山が望まれる。ここアルトリ岬は7000年ほど前、有珠山の山体崩壊で流れ下って海へ突き出した流れ山だ。有珠山を構成していた岩石はここよりはるか沖合まで流れ落ち、海底の岩礁を作り潮間帯では磯となった。岩礁は海藻を育て多様な生きものたちを育んできた。近くに伏流水の泉もある。マガキとフノリのおいしい感触が手に伝わる。ここでならば縄文の昔、私もなんとか暮らせる、と思った。どのような生活だったのだろう。