121 潤沢の証人

スジエビ 観光客の多い少し賑やかな壮瞥温泉の湖畔を潜ってみた。壮瞥滝付近とは大違い、みごとに豊かな生物たちの姿に出会った。要するに「富栄養化」の世界が有った。アオミドロ( Spirogyra  sp.)に被われた軟らかな世界に、たくさんのスジエビが遊んでいる。ヨシノボリの顔も見えている。陽光の届く豊潤な世界だ。潤沢な生物相を示すのは恒常的にリンや窒素などの栄養塩類が補給される、水陸相まっての生物生産が活発な地域である証しなのであろう。

119 いのちの証し

ウチダザリガニ、マシジミ 青い湖底に白いものが目に付いた。上はウチダザリガニのハサミと下は粉砕されたマシジミの殻。水深3~4m。1930年頃に阿寒湖に導入されたウチダザリガニは道東域で繁殖域を広げていたが近年洞爺湖、支笏湖からも繁殖が確認され、特に洞爺湖サンパレス付近では大量の個体が継続的に捕獲され、環境省により調査が行われている。その地点から東へ4km離れての確認となる。今年2個体目で、この種特有のハサミの白いシグナルも確認済みだ。マシジミはコイが摂餌後吐き出したものだろう。コイには喉に大きな咽頭歯が有り、タニシや二枚貝の硬い殻をかみ砕く。海と違ってこの洞爺湖の動物たちの姿は少ないが、生き物たちの存在の証しはあちこちにある

112 マシジミ

マシジミ 夏の暑い日には洞爺湖の水につかる。私の場合、殆どスキンダイビングで各地の海などで過ごしてきたから、ここでもマスク、シュノーケル、フィンのセットが無ければプールと同じように溺れそうになる。澄んだ水の中、暗い湖底へと続く岩壁を潜るのは爽快だ。水深3mでマシジミを見つけた。コイが食べてまとめて吐き出した跡がいくつもある。若い殻は黄緑色、卵胎性。北海道各地で採れる美味しいヤマトシジミと違い、純淡水産二枚貝だ。

108 カバキコマチグモ(樺黄小町蜘蛛)

カバキコマトグモ 細長い一枚板のススキの葉を、型紙もなく切り取りもせず、折って畳んで紡ぎ綴じたチマキ型マイホーム。雌にとっては雄との愛を育み、やがて産室とし、そのまま棺となる終生の家。一見華奢にも見える細身、飴色の肌、でも気性は激しくその毒性は日本屈指。独り身で子を守る母性の化身。やがて子グモは母の生き身を食べ成長する。「どんどん食べて、おおきくなるのよ、、」。夏雲の下、茂った夏草の中でごく当り前にある究極の母性愛。上が雌下が雄。

106 瑠璃色の晩餐会

晩餐会 暮色濃い有珠山外輪、観光客のさんざめきも落ち付いて、やっと静かになった頃、足もとでかすかに、しかし眼を射るような瑠璃色に動く光の塊を見つけました。シックな濃紺のタキシードに身を固めたオオヒラタシデムシと青藍色の衣装に包まれたキンバエたちの正餐の時。今日のメインディッシュは何でしょう。客に踏まれた青い尾のトカゲの子、それとも潜りそびれた哀れなミミズ。逢魔が時、人知れず進行中の素敵な食事風景を覗き見てしまいました。

102 テン -貂-

テン テンMartes memlampusが死んでいた。昭和新山のそばで車にはねられていた。喉から胸にかけての毛色が金色に輝いていた。過去に本州から毛皮用に国内移入され、放野されたものの末裔だろう。黒い脚が特徴だ。目の前を横切るお前の野生の姿を見る幸運に与かりたいものだ。三国志の美女貂蝉は呂布の思われ人。北海道には準絶滅危惧種のエゾクロテンがいる。

101 桜桃鴉

桜桃鴉 今年のサクランボウは少し実が付いた。前の4年間はだめだった。果樹の町壮瞥町全体が同じ傾向にあるらしい。寒く長い春だったので不安だったが、少しの収穫は望めるようだ。と思っていたら近くに住む鴉がやってきた。スズメもたくさんやってきて連中は食べ放題。美味しいとこどりの食傷の果て、「落果狼藉」散らかし放題の始末。自然は思うように行かないところが面白い。

98 四羽の子ガラス

子ガラス 松の樹に住まうお隣さんが子供を引き連れてきたら、何と4羽だった。食べざかりの子ガラスが腹をすかせて親はもう大変。去年は3羽で、一羽は足が悪かった。親は今年で4歳、写真右奥、親離れさせたくって怒って頭の毛を逆立てているのが父親。その手前が母親。子は草を引っ張ったり何かをつついたりして遊び呆けているが母親は時折、所帯やつれか一羽で呆然としている。

93 クモの子を散らすように

クモの子 有珠山南外輪の遊歩道。日当たりのよい乾燥した草原に、孵化して間もない子グモの集団がいくつも見つかった。この季節はこの子たちの旅立ちの時。網の上で離散集合を幾度か繰り返し、風が吹いたくらいの何かの拍子に、同じく生まれた兄弟達がそれぞれの方角へ散ってゆく。別々な運命をたどって数匹残れば終わり好し。過酷な世界が待っている。クモの子達に幸あれ。

88 急流が住処

カワガラス 速い流れを逆手にとって、数居る野鳥の世界でここを棲家とするカワガラス。今様にいえばニッチを生業に生き抜いている時代の寵児だが、もともと生きものの世界ではこれがあたりまえ、こうやって種は進化してきた。清流の中でカワムシなどをエサにして、せわしなく生き切る命。つきあってみると番だった。巣はどこに?北の火の山、羊蹄山の伏流水に見つけた野生。