106 瑠璃色の晩餐会

晩餐会 暮色濃い有珠山外輪、観光客のさんざめきも落ち付いて、やっと静かになった頃、足もとでかすかに、しかし眼を射るような瑠璃色に動く光の塊を見つけました。シックな濃紺のタキシードに身を固めたオオヒラタシデムシと青藍色の衣装に包まれたキンバエたちの正餐の時。今日のメインディッシュは何でしょう。客に踏まれた青い尾のトカゲの子、それとも潜りそびれた哀れなミミズ。逢魔が時、人知れず進行中の素敵な食事風景を覗き見てしまいました。

105 昭和新山赤煉瓦

昭和新山赤煉瓦 新山のドームがせり上がり始めたのは1944年12月。激しい噴火の続く第3から第7噴火口に囲まれた丘からせり上がり始めた。それまで地表近くにあった山地、畑、河原の砂礫はせり上がる900℃以上の高温のデイサイトにしっかりと焼かれながら煉瓦となってドームを作りあげた。デイサイトの色は灰白色。だから、昭和新山の赤い色合いは赤煉瓦の色。7月20日、18時20分。

104 ジューンベリー

ジューンベリー  生垣の上に広がる灌木としてジューンベリーを見つけ、この春植えた。5、6本の株立ちで細い花弁の白い花が咲き、葉も爽やかで気に入っている。花が咲いた分実が付き、青く硬かった実が赤くなり黒紫色に色付いて、口にするともちっとした濃厚な旨味が口の奥歯あたりに広がる。英名はJuneberryだが当地ではJulyberry。-30℃まではOKとテキストには書いてある。有りがたい植物だ。画像の向こうは昭和新山と有珠山。

103 サルナシ

サルナシ 半日陰の中にひっそりと咲くサルナシの花。俵型の実を切ると果汁あふれる云わずと知れた無毛、フィギュア版のキウィフルーツ。毛のある中国産のシナサルナシ(Actinidia chinensis)がニュージーランドで品種改良され彼の国の国鳥の名をもらい世界へ羽ばたいた、いや転がり広がったのがキウィフルーツ。昔から山では人気の奨果で子どもらは舌が荒れるくらい食べたものだ。

102 テン -貂-

テン テンMartes memlampusが死んでいた。昭和新山のそばで車にはねられていた。喉から胸にかけての毛色が金色に輝いていた。過去に本州から毛皮用に国内移入され、放野されたものの末裔だろう。黒い脚が特徴だ。目の前を横切るお前の野生の姿を見る幸運に与かりたいものだ。三国志の美女貂蝉は呂布の思われ人。北海道には準絶滅危惧種のエゾクロテンがいる。

101 桜桃鴉

桜桃鴉 今年のサクランボウは少し実が付いた。前の4年間はだめだった。果樹の町壮瞥町全体が同じ傾向にあるらしい。寒く長い春だったので不安だったが、少しの収穫は望めるようだ。と思っていたら近くに住む鴉がやってきた。スズメもたくさんやってきて連中は食べ放題。美味しいとこどりの食傷の果て、「落果狼藉」散らかし放題の始末。自然は思うように行かないところが面白い。

100 撹乱の果てに

ジギタリス 家から見える草地の向こうの土手に赤い花が咲いていて、行ってみたらジギタリスだった。どこからか種子がやってきて野生化している。手前はよくあるフランスギク、向こうの白いのはマツヨイセンノウ。近くにはビロードモウズイカも長い穂を付ける。イギリスのごく一般的な図鑑を開いて見たら全部当たり前に載っていた。北海道での外来植物の蔓延は相当なものだ。一度野生化した生物はまず駆逐できない。由来はどうあれ可愛いね。嫁に来たら家族だよ。

99 うまみを濃縮

ホタテのスモーキング ここのジオパーク、陸水もあれば海もある。豊かな海の幸で知られる噴火湾は内浦湾の呼名もあって、四季折々、みごとな食材が膳を賑わしてくれる。前浜で採れるホタテは滋味豊かで実に甘い。それをサクラで燻してみた。天日塩のみ、他に一切味付けはなし。旨くないわけがない。濃縮された風味は口いっぱいに広がり、燻香は鼻に抜ける。5月あたりに出回る稚貝は、肝臓ごと強めに燻す。寒中は生殖巣が見事に大きく、ほっくりとしてこれがまた旨い。

98 四羽の子ガラス

子ガラス 松の樹に住まうお隣さんが子供を引き連れてきたら、何と4羽だった。食べざかりの子ガラスが腹をすかせて親はもう大変。去年は3羽で、一羽は足が悪かった。親は今年で4歳、写真右奥、親離れさせたくって怒って頭の毛を逆立てているのが父親。その手前が母親。子は草を引っ張ったり何かをつついたりして遊び呆けているが母親は時折、所帯やつれか一羽で呆然としている。

97 草を引く―ヤブマメ

ヤブマメ 庭の日向や陰りからいろいろな植物が顔を出す。藪にするのもいやだから、膝を折り、頭を突っ込んで、素手で草を引く。袖は露に濡れ、指先は土まみれ。昨年は手を抜いたせいでヤブマメが大発生した。この種はハギに似た解放花のほかに、地下の閉鎖花に小指の先ほどの豆を付ける。縄文びとは身近な食として食べたようだ。アイヌ語では「アハ」といい、秋や春先に収穫、保存もできたという。「かてめし」にでもしようか。取り去るか残すか思案中。