227 キノコの気もち

トガリアミガサタケスイセンが咲き始めたので、例年のようにサクランボウの樹の下でアミガサタケを探した。狙いは見事に外れ、今年は台所の脇で10個見つかった。なぜ発生場所が変わったのか、キノコが何を考えているかは判らない。大体にして地中の暗くカビ臭い世界のことだ。しかし、乾燥させると見事に香りの高い「セップ」となる。食べ方は良く知っている。クリームにもバターにも、鶏肉にもよく合う。生食は毒。

226 有珠山残照

有珠山残照朝から雲は低く、日中通しての小ぬか雨。今日の雨は芽吹きを促す恵みの五月雨と思い庭にやってきていたコムクドリを数えていたら、突然の夕映え。こんな日もあるのだ。低気圧が津軽海峡を東へ横切って、弱い冬型の気圧配置。西から地上に光が入ってこれこの通り。人生、捨てたものじゃない。地上のものすべてが赤く染まった中、いつもの有珠山ビュウポイントへ急いだ。田圃に水が入っていてこの風景となった。

225 私はダフネ

ナニワズナニワズの花。雌雄異株と言うが、雄株は不稔性というだけで、どちらも両性具有の曖昧さが付きまとっている。左は雌株、右は雄株で、見た所大きさと言い色と言い外見上は明確に判別が付くのだが。香りは強いが好き嫌いは分かれる所。沈丁花の薫香とは少し違う。222でアポロンから逃げたダフネと書いたが、身の内は色々あって、悩めるダフネであったのかもしれない。

223 梅干

梅干し知人宅へ自家製の梅干しを送った。2010年収穫の3年物だ。器量は良くないが味に深みが出ていて、この辺りが一番美味しいかな。10年前、当地へ越して来た時に頂いた「豊後」の古木。5月の半ばサクラと一緒に咲いて、8月初旬に収穫、1ヶ月漬けて9月の晴天を選んで2、3日干す。ほんのり色付いたのを地下室で1、2年熟成させる。一般に、北海道では収穫の遅れからか、干さずに「梅漬け」として食べるようだ。

220 生き残ったセンノキ

ハリギリ(センノキ)昭和新山を見上げる洞爺湖湖畔にハリギリ(センノキ)の大木がある。胸高直径1mになんなんとする威丈夫だ。1944年、激しい噴火を繰り返していた昭和新山の7月11日、第3火口からの第5次爆発は強烈なサージを伴った。三松正夫の「昭和新山生成日記」によると、

「この噴煙は北方洞爺湖畔部落に押し倒し、猛烈な熱雲となって地上を渦巻き、火口より湖岸まで2km、幅1.5kmの農地と、十数戸の農家に大損害を与え、湖畔の保安林を倒してさらに湖中に吹き進み12kmの対岸洞爺村に達し、「向洞爺」の農作物に大害を与え、午前11時25分間歇爆発となった。爆発途中より大雷雨となり、噴煙は粘性高き泥雨と化し、万物に付着したため、植物に致命的大害を与えた。噴石もまた多く、径20~30㎝の大石が火口500mに飛び、字西湖畔大寺寅吉氏宅3棟は熱石により焼失した。熱雲は湖岸樹林の半面を焼いたが、その温度は60℃内外と思われ、途中避難した農民は軽い熱傷を受けた。熱風は地上の砂礫を吹き飛ばし、これが窓ガラスに銃弾貫通孔のような穴をあけたり、磨りガラス(ママ)のように暈を付けた」

と、昭和新山の噴火の凄まじさを物語る記録として残されている。無くなってしまった湖畔の保安林は、現在、後に植林されたトドマツの並木となっているが、その中にこのハリギリのように何本かのたくましく生き残った大木を見ることが出来る。

217 フキノトウ

フキノトウフキノトウが開いている。その向こうは雪の下で倒れていた麦の茎が陽を受けて続き、遠景は有珠山と昭和新山。風は軟らかく、枯れ草と土の匂いがする。三月そして四月、雪の下で待ちに待っていた生きものたちが一斉に蘇る。どこかでヒバリの声がする。懐かしい緑の季節の到来だ。ここは伊達市から壮瞥の立香へ続く丘陵、有珠山、昭和新山を見渡すには第一級の場所だ。

216 剪定作業

剪定作業必須アイテム我家のサクランボウとリンゴの選定作業が始まった。合わせて30本の内、半数は太い樹なので脚立に上っての作業となる。晴れ、時折吹雪、風あり、気温は10℃くらい。毎年のことだ。残りの作業はブドウ、プラム類とハスカップ、ラズベリーなどの低木で気が楽だ。近くの専業果樹園さんはあらかた作業を終えている。あとひと月ほどでこの町は、大地も樹木もとり囲む山々も、すべてが花でおおわれる。

215 いのちの「ミウラ折り」

ルバーブ根雪のとけた跡でルバーブの新芽を見つけた。縮緬模様のたたみ皺そのままに、満を持しての登場だ。燃え立つ炎のような春の色はみなぎるエネルギーを与えてくれる。このたたみ皺、よく見たら「ミウラ折り」だ。二重波形可展面という展開様式のみならず、可展面そのものが湿った土の下の新芽という微空間の中で、自律的に自己形成された所にすごさがある。時空を折りたたんだ四次元的所産だ。「大黄折り」。知的財産権・意匠権はダイオウ=大黄にあり。

214 北国必須アイテム

寒暖計雪が溶けたら雨樋に釣るしておいて行方不明になっていた寒暖計が見つかった。老化、凍結乾燥、膨潤、おまけにツタの触手にも絡み取られて散々な体たらく。でもデジタル数値ではない修理可能な従来品。冷え込んだ冬は-20℃近く、夏は北国だから30℃ちょっと。この寒暖計、まだまだいけます。あと10年はもつかな(私と重なるね)。今日は春の日差し15℃くらい。少し遅いけど、北国の春は充実していますぞ。濃厚で圧倒的な春を味わえますぞ、諸君。

213 海からのおくりもの

イガイスーパーで手ごろな大きさのふくよかなイガイ、7個入って398円。春は海からやってくる。ラベルには昔からの「ひより貝」と表示されていた。標準和名は「イガイ」で、老成した個体では十数㎝となる。北方種の「エゾイガイ」さらに大きくなり、ヨーロッパ原産の通称ムール貝(一般的にはムラサキイガイを指す)は一回り小さい。白ワインで蒸したが、味は濃厚で海の香りが口いっぱいに広がる。一つの貝から何と小さな真珠が7個も出てきた。春から縁起がいいね。