389  ヤマシロオニグモ 

ヤマシロオニグモ裏庭への階段を上がり花軸を伸ばしたユッカの横で見事に張られた蜘蛛の網に顔を突っ込む。私の顔中の細毛剛毛が触毛となり、アッと叫んで瞬間意識が昇華する。瞬間藪の中の獣の末裔だったことを思い出す。梅干大のオニグモより少し小型で、背の白斑からこの種の背白型の雌と確認した。夜間強靭な網を張り昼間はユッカの蕾の間で寝ている。背の模様は色々あるらしく雄は異なる形だというから興味がわいた。

 

388  コシカギク

コシカギクコード式の刈払機で道路際を刈っていたらむせるような甘い匂いに一瞬手を停めた。「かみつれ」、そうカモミールだ。しかし形態が少し違う。舌状花がない。すべて管状花の円いぼんぼり。調べたらコシカギク。英名Pineapple-weed。ヨーロッパ、北米に普遍的で、道路わきの踏みつけ環境で生育するとある。どの地でも頭花を食べ、ハーブティーにし乾燥して香りを楽しむ。雑草という乱暴な考え方は自然界には無い。

387  開拓と火の山と

クリの花家の前の原っぱに大きなクリの木があって今白い花の真っ盛り。向うに見える熔岩ドームは昭和新山の天然煉瓦。上昇した高温の溶岩に焼かれた煉瓦被膜の赤いドームだ。クリの樹は困難な開拓地でのたつきの証し。この町にはふた抱えもあるクリの巨木がたくさんある。この町の人々は入植後、1911年、1944年(昭和新山)、1977年、2000年と4回の有珠山噴火を経験した。

386  有珠火山があって

佐藤錦初夏の北海道太平洋沿岸には海霧が湧く。海際から十数kmの、ここ壮瞥の町は有珠山が衝立となって噴火湾からの海霧はやってこない。有珠火山あっての果樹栽培地帯だ。地形の少しの違いが豊穣をもたらす。ブドウ、洋ナシ、プルーン、サクランボウ。リンゴに到っては三十数種類が栽培されている。わが家の古いサクランボウの樹からの今年最後の収穫がこれ。大地に乾杯!!

385  違う風景

ビル街東京上野泊。13階からの風景がこれ。一見清潔風だが、違和感がこみ上げる。白い瘡蓋のような街。かつて訪れたうんこ色の大気に包まれたカルカッタの市街も、排気ガスに澱んだ喧騒のカトマンズももっと人間臭い街だった。ここには緑がない。「ヒト」が見えない。黒い土はどこだ。 ビル群の向こうにはベイエリア、窓の逆方向には上野公園。大東京の新旧の顔も見られるはずなのだが。人間世界の終焉の風景か。

384  うたた寝カラス

ハシボソガラスわが家の近くにテリトリーを持つハシボソガラス。庭先、5m程の所で居眠りをしている。10分ほどこの状態。暑くって口をあけ、羽を伏せ、眼は半眼、意識も覚束ないようで、瞬膜(白目)を閉じたり開いたり。毎年何度か目にするが、このカラス確か7歳くらいの雄。彼らの寿命からして働き盛りの年代だ。夏の日の水浴び、砂浴びの延長にあるリラックス状態なのだろうか。

383  束の間の赤紫

ムラサキツユクサ庭の半日陰にムラサキツユクサが咲いた。明け方に咲いて、午後には打ちしおれてしまってもう見る影もない。アサガオなどと同じ一日花なのだ。しぼんだ花を摘むと指先が赤紫になる。短命な花の名残りの色。高校の生物で習った原形質流動、葉の気孔はたしかこの花だったと思い、60Xの実体顕微鏡で覗いてみた。雄蕊の数珠状の細胞は見えたが原形質まではだめだった。気孔は辛うじて見え、孔辺細胞、副細胞も確認できた。半世紀前が懐かしい。

382  マーダーは喪服で

腐肉に集まるエゾマイマイの殻を拾っているうちに現場に出くわした。肉の入ったマイマイの殻に長い首を突っ込んでいるのはその名もまさしくエゾマイマイカブリ。べつにエゾマイマイだけの天敵ということではないのだが、マイマイカブリというカタツムリ類を好む肉食昆虫の北海道型でこの名が付いた。蒼い光沢のオサムシに近い洒落者。殻の中から出て来たのは他にクロヒラタシデムシ。そして死の香りに目のないニクバエ。役者は揃った。

380  トクサ(砥草)の穂

トクサ昭和新山鉄道遺構公園のトクサの群落で胞子穂のあるトクサを見つけた。シダの仲間といわれると違和感があるがツクシに近いというなら納得できる。ツクシと同じく球果状の「胞子穂」を先端に付け、その茎は濃緑色で光合成をする。表皮はケイ酸を含んで硬く、紙やすりのように木工の過程で研磨剤として使われた。子供の頃、この茎を束ね丸めて束子代わりにしていた。爪を磨くマニキュア材だったことも覚えている。

379  ルバーブの種子

ルバーブ移植したルバーブに種子が付いた。まさしくタデ科の種子の形でイタドリの種子によく似ている。原産はシベリア、北アジアだそうで、北海道は栽培の適地で、最近になってやっとジャムやパイに使われるようになった。茎の赤い品種が欲しいところだ。イギリスヨークシャー地方のルバーブは色と香りでことさらその名も高いが、2~3年物の根から薄暗い温室で促成栽培するとのこと。なかなかの困難さがつきまとうようだ。