675 台風一過

リンゴ一週間以上彷徨い続けたブーメラン台風10号は、三陸から津軽へ駆け抜けた。夜半の東風は猛烈で、朝、見回ると裏庭のリンゴ、モモは見事に落とされていた。リンゴは830個だった。近隣の果樹農家は痛手をこうむったに違いない。函館や津軽のリンゴ農家はどうだったののだろうか。道東の空知川、十勝川水系でいくつもの河川が氾濫しているという。収穫期の田畑が心配だ。

674 破壊と再生

2000年噴火遺構2000年の有珠山噴火で被害を受け放棄された公共住宅。屋根には噴石で多くの孔が開き、1階は火口から噴出した熱泥流で埋もれている。2階には50m上流から泥流で流されてきた国道の木の実橋が激突した損傷が残っている。泥流は橋げたをさらに100mも押し流し、前年に完成したばかりの町営浴場・やすらぎの家の真ん中を突っ切って厚さ1mの泥流堆積物を残した。

アパートの屋上の孔からの雨水は床を腐らせ、割れた窓から飛び込んだ綿毛を持ったヤナギ類の種子が発芽して、今ではこの通りの繁茂ぶり。5年ほど前の屋内探査ではこの樹々の根は和室の畳やカーペットの下いっぱいに広がり、隣室はシダが繁茂し、神棚にはシジュウカラの雛が育っていた。自然災害の現場で、破壊と再生を見た。

672 朝の虹

朝の虹ふと見上げた空に、眩しく輝く朝の虹をみた。こんなに強い光の虹を見たことはない。雨で空気が洗われたせいなのだろうか。17日に台風7号が縦断したばかりなのに、11号、9号がさらに北上中だ。すでに水に浸かった地域もあり、農作物には深刻な事態だ。「朝の虹は雨の予兆」と気象学のテキストにある。虹の反対方向の東の空に、午後からの雨雲の帯をレーダー画像は捉えている。

671 暑気払い

ソイとアイナメ蒸し暑さにへきえきしていた最中に、釣ったばかりの魚の差し入れ。「中学生の息子が釣り過ぎたので」とのこと。45㎝を超すソイとアイナメ。魚をさばくのが大好きな私には願ってもない暑気払い。上身は冷凍し、いずれムニエルに。あらとむね肉の濃い味の醤油煮は、舌に纏いつく旨みがあった。この地には豊饒な海があり、岩礁地帯には今も縄文の昔もいい魚がいる。ジオの恵みだ。

670 国縫川のお宝

国縫川の礫長万部町国縫(くんぬい)川下流で岩石採集。「クンネ・ナイ」(黒い・川)が語源だといい、上流には訓縫層、八雲層の露頭があるという。分水嶺を越えると旧石器時代のピリカ遺跡があり、支流の茶屋川が石材の産地と聞いた。グリーンタフ、メノウ、硬質頁岩が見つかり、メノウは火打石に、頁岩はアポイジオパークで買い求めたシカの角で欠いて、石刃づくりを楽しむ。

668 錦多峰川城壁

錦多峰城壁樽前山の1667年、1739年のような大規模なプリーニー式噴火は火砕流や多量の降灰を伴い、泥流、融雪泥流も引き起こす。苫小牧西IC近くにある錦多峰(にしたっぷ)川、スリット式砂防ダムは、鋼製矢板でセルと呼ばれる円筒を作り、連結して土砂を充塡している。流路はスリットとしてあり、円筒は直径40m,高さ12.5m。噴火に備え、街を守る現代の城壁。火山の眠りは浅い。

666 闖入者

ニホンアマガエル夜、キッチンの外、灯りに集まる虫を求めてアマガエルがやって来ていたのは知っていた。翌朝、室内のシンクの上に当たり前の顔をして鎮座ましましていたのには驚いた。黄緑色のニホンアマガエルだが、しわしわで灰色のサッカー生地の甚平みたいでいかにも夏っぽい。去年もこの色をした御仁を見ている。太って貫禄がついて、これから先何年でも生きてやるぞというような面構えだ。

665 ヘーゼルナッツの実

ハシバミ・ヘーゼルナッツ縄文時代から知られている「はしばみ」・ヘーゼルナッツが実を付けた。毎年待ちわびていが今年雌花雄花がたくさん咲いた。(ブログ626)堅果は白いがもう膨らんでいて充分に硬い。4本の樹で合計100個くらいか。先ずは煎って食べよう。クッキーにすると香ばしいのは知っている、チョコレートをコーティングすると極上の、、などと、採る前の「はしばみ」算用をしてしまう。

663 トッカリショ

トッカリショ室蘭港の裏側にこんな風景があるのをご存じだろうか。トッカリショは太古からの自然と人の生活が織りなす第一級の風景(ピリカノカ)だ。トッカリとはアザラシのこと。草地の下の断崖は海底火山の噴出物の堆積でできた室蘭層でイタンキの白い岩壁とつながり、成分の違う凝灰岩の層が傾斜していく層にも重なっている。小さな浜には何代も続く漁師たちの家がある。

私たちは工業を振興し港を盛んにする中で、このような美しい風景を捨ててきた。いくつものアイヌの伝説を伝え、人々の心に安らぎを与えてきたオイナオシ、オハシナイ、祝津(シュクズシ)、エトモの海はすでになく、電信浜、ポンモイの海岸は姿を変えた。砂浜は埋められ、岬はコンクリートで囲われてしまった。トッカリショに続くイタンキの浜が、海辺の生き物や鳴り砂の浜を守るという人々の熱い思いで守られているのが救いだ。

オイナオシの浜に続く栽培水産試験場が造られた場所は、豊かな海藻とスガモの藻場のある岩礁地帯であった。海の生物たちの揺籃の場を破壊して造成された施設は、祖先から譲り受けたありのままの多様な生態系をどのように補えるのだろうか。埋め立てでできたMランドという名の堤防の先は、いままさにピリカノカ・マスイチの絶壁を窺がっている。

 

661 クワの実

クワの実初夏の風が吹き渡る林にクワの実を見つけた。陽の透ける葉裏の黒い実はちょうど食べ頃で、甘さとかすかな酸っぱい味が懐かしい。口のまわりや衣服まで赤紫に染めながらも子供たちはおやつ代わりに摘んで食べたが、いまは誰も食べない。樹皮からはものを簡単に束ねるくらいの繊維が得られるし、材質は強靭で道具の柄や、杖として日常使う最上の棒っきれとなる。身近なお宝だったのに。