1054 新しい沼

2新しい沼000年の有珠山噴火では、隆起によって板谷川上流が堰き止められ、旧国道230号線上に西新山沼が誕生した。この隆起では別の支流にも新しい沼が誕生している。下草が藪を作らぬうちにと、地形や植生を確認するため春の穏やかな日を選んで出かけた。二つの小さな流れ込から始まり、断層群により堰き止められた沼尻まで探索した。左上の尾根筋が地熱を持つ地帯、その奥が西山。

1053 壮瞥公園のウメ

壮瞥公園のウメ洞爺湖から流れ落ちる壮瞥滝の上にある壮瞥公園のウメ。いつもならこのウメの開花を待って人々が押し寄せるのだが、今年はCovid-19の感染予防とのことで登っては行けない。梅越しに洞爺湖を一望し、その向こうの残雪を頂いた蝦夷富士・羊蹄山。極め付きの風景なのだが。お蔭で今年は逆方向から、300mmレンズを使ってのお花見と相なった。咽るような香りを嗅げないのが残念。

1052 キツツキの食卓

キツツキ食痕洞爺湖畔、キツツキが食べ散らかした木くずを撮っていたら、「写真ならこっちがいいよ」と小さな女の子が教えてくれた。啄んだ孔の奥、春の光を受けて朽ちた樹の木部に虫の見事な食痕がみえた。「眼がいいのだね、君は」。気が付かなかった。キツツキの狙いはこれだったか。昆虫だと思うがそれから先は不明。食卓についたのはアカゲラだと思うが姿は見ていない。樹はアズキナシ。

1051 バッコヤナギ

バッコヤナギまだ冬色の林の中に柔らかな黄色を見た。近づいてみるとヤナギの雄花、春の陽に輝くバッコヤナギの雄花だった。淡く光る軟毛に包まれた「ネコ」は、川辺のネコヤナギほど可憐ではないが、膨らんで雄蕊を盛大に展開し始めると負けず劣らずの豪奢な金毛のネコとなる。野山の生命全てを甦らせる春は、溢れんばかりの土の匂いと若葉の色で、野山を惜しみもなく満たしてくれる。

1050 今日の昭和新山ドーム

昭和新山ドームいつもの年より早い春。今朝、4月6日は薄い積雪があった。その雪も午前中に溶けて新山ドームにしみ込み、山頂は白い噴気に覆われた。湿度が高いのと気温が低いこともあって、久しぶりの火山ドームを見た。東風に立ちむかう、荒ぶる姿にも見える。 この溶岩ドームの地下深く、かつて溶岩だまりから延びていた岩体がまだ余熱を持っていて、そこからの熱補給なのだろう。

1049 生命潮流

ハクチョウ遥か高い空を小さく鳥が飛んでいる。望遠レンズで写し、拡大したらハクチョウだった。二羽だけ、方向は北。あの高さから何処まで見通せるのか。ただひたすら羽ばたき、啼き交わし風に乗って、ついにはシベリアにたどり着く。導く本能には理由や目的はない。何があっての、なぜの二羽なのか。私にはわからない。巡ってきた季節を見下ろし、時の奔流に乗るいのち。生命潮流。

1048 失ったもの

失ったもの失ったものを取り戻すのは容易ではない。自然は向こうに見える絵葉書となり、人は自らの感性で捉える自然を失ってしまった。 瞬間に見つけたもの、心が捉えたものは真実だ。向こうではなく、手を伸ばすとそこにある。山の尾根と広葉樹林、湧き上がる雲。自然を構成する基本のパーツであり、それ自体もそれを取り巻く現象も皆、意味を持ち単純でかつ美しい。ここから始めよう。

1047 洞爺湖・春の予感

洞爺湖春の予感冬の名残りの樹々を載せた小島が、柔らかな光を受けて湖面に映っている。風のない早春のひと時。心安らぐたたずまい。前の年の豊穣はすべて地に還り水に沈んで、芽吹きの膨らみとなってまた蘇る。 遠く微かな「春の歌」が聞こえるような。あれはメンデルスゾーン。コロコロと明るい水面を転がるフルートの音色。 またいく度かの雨が降り、やがて木の芽色の風が吹きわたる。

1046 ねぐらは有珠山

有珠山のカラス夕暮の欝金色の空を、カラスたちが有珠山へと向かう。まずはロープウェイの太い索に集結し、ねぐらは昭和新山のサンゴ岩下の林。百羽、二百羽を超える。久保内や立香、滝之町あたりを行動圏 (home range) にしている集団だろう。巣作りが始まっている縄張り (territory) をもつ個体群や、いつも群れて移動している若鳥集団も一緒。ハシブトガラス 、ハシボソガラス合同の日周行動だ。

1045 ホザキヤドリギ

ホザキヤドリギ壮瞥町の開拓記念館「紫明園」。園地には7本の直径70㎝を超えるカツラの大木がありすべての樹に赤い実のヤドリギが寄生している。偶然に写真中央の樹の直下でホザキヤドリギの黄色い果実を見つけた。落葉性なので植物体は見つけられなかった。北海道での新記録となった洞爺湖畔のハルニレから約1.6㎞離れた市街地での新しい分布だ。果実食の野鳥による種子散布と思われる。