昭和新山近くの沼地に、オオハクチョウが来ている。体重はおよそ10kg。米の大袋の重さだ。その気になったらそばにいるカルガモなど踏み潰されそうだ。飛ぶ鳥としては最重量級で、そのための翼の力はひときわ強く、ボートを漕いでいて頭上を飛ぶオオハクチョウに出会うと、その羽音に思わず身を屈めてしまう。野生の命は力強い。水掻きのついた大きな黒いカンジキ足は雪上で力を発揮し、他を寄せ付けない。
「火山・大地・気象」カテゴリーアーカイブ
196 銛をうつ淑女
BSアーカイブスでユージニー・クラークさんの姿を見つけた。ニューギニアの奇妙な魚、コンビクトフィッシュのドキュメンタリーフィルムだった。海洋生物学者で母親は日本人。「銛をうつ淑女」(1954発行)で知ってからの、私の憧れの人であった。お会いしたことは無いけれど。
半世紀前、フォルコ・クイリチの「青い大陸」、クーストーの「沈黙の世界」が上映され、日本中の海好きはみんなこれにやられてしまった。私も“もぐり”が好きだったので1967年、潜水士の資格を取った。それまでのヘルメット潜水ではなく、スキューバ潜水での日本で初回の潜水士免許証交付だったと思う。しかし、教員になったばかりだったし金も無かったので、殆ど素潜りだった。軟体動物の分類を研究テーマにしていて、三浦半島、伊豆や三宅島で水深20mまでを潜っていた。年中、海に浸かっていた時代だった。
あれから幾星霜、“銛をうつ淑女”も銀髪となり、でも実に生き生きとして魅力を失っていなかった。2008年には、優れたフィールド研究者に贈られる Explorers Club Medal を受賞したという。
かく言う私は夏には洞爺湖で少しだけ潜って遊んでいる。今年あたりは有珠の海へ遠征しようか。
195 岩と水と空と
194 寒中の冷燻
192 アカミヤドリギ
191 あられ氷・真砂仕立て
190 白きたおやかな峰
188 吹雪の幕間
187 ニョロニョロ
-15℃、吹雪の中を伊達市大滝の円山の通称ニョロニョロの洞窟へと向かう。火山マイスター7名参加で、「大滝アウトドアアドベンチャーズ」の坂井さん、服部さんのガイドで、周辺の自然の説明を受けながらのスノ―シュートレッキングとなった。行程は片道2.5km、往復3時間、雪原と疎林の中、雪を踏みしめひたすら歩く。以前から一度は、と思っていた洞窟の奥での氷筍の見事さはさすがに圧倒的だった。氷筍は-2℃~-5℃の多湿な環境の中、天井からの水滴を受けて育つという。洞窟の奥は幾分気温が高いようで、カメラのレンズが瞬時に曇った。外の外気との差が、いくつもの微妙な条件の中で氷筍は滴りを受け氷結し、生長し、昇華して痩せる。秀麗な火山、徳瞬別岳の自然が育んだ冬季限定の造形の不思議世界だ。
魅力的な体験が出来るが、洞窟内がそれほど広くないこと、氷筍の脆弱さを考えるとオーバーユースに配慮しなければならない。アプローチ地点での駐車スペースがないことや私有地を通過することを考慮して、地域公認のガイド同行が好ましい。
186 日暈(にちうん)
柔らかな光が満ちてはいるが、まだ1月末の寒さが身につたわる。見上げた空に大きな日暈が出来ている。上空の細かい氷晶が太陽光で屈折され、太陽の周囲に大きな輪となる、比較的通常の物理的現象。この大きさは太陽を中心に半径22度の内暈(ないうん)が一般的で(22-degree halo)、外暈と呼ばれるものは46度だそうである。目安になるものが無い中空でとても大きく見える。夜空の星を説明する尺度でいうと、手をいっぱいに伸ばして親指とひとさし指いっぱいの間隔を二つと、握りこぶし一つ並べた角度だ。画像に収めたいと思い最良の場所を探した。噴火湾に臨む伊達製糖所の、冬、いつも見る白い蒸気がアクセントになる位置まで近づき、シャッターを切った。