234 ペシポクの穴 投稿日時: 2013年5月29日 投稿者: nizaemon 知里・山田「室蘭市のアイヌ語地名」(1960)に「ペシポク」「ペシポキ」「ペシポッケ」(Pespok;Pesipoki;Peipokke)以上いずれも使われた。語源は崖の下、の意とある。この浜でたまたま出会った漁師に聞いたら「ベシボケ」。「あ、ペシポッケ」と聞き返したら、「そうだ」とのこと。「で、あそこの洞窟は?」「ベシボケの穴」。私(撮影者)の後ろにも出口がある巨大な洞窟。詳細は秘密。
233 新羊蹄山 投稿日時: 2013年5月29日 投稿者: nizaemon ヒバリの野面に収まってはいるが、この羊蹄山、最近数千年は沈静状態の若い火山だ。有珠山は七千年の眠りを破って1663年に噴火し、以来9回噴火し現在に至っている。富士山に似た端正な山容の下には古羊蹄山が存在し、かつて西側に巨大な岩屑なだれを引き起こしたという。一万年以降の活動の跡が山頂火口、半月湖、火砕丘として残っている。危ない危ない。
232 相互扶助 投稿日時: 2013年5月28日 投稿者: nizaemon コアカミゴケ。有珠山山頂近くのコスギゴケの群落の中で。コケではなく菌類と藻類の共生体。雨などの後は水を吸収して軟らかいが乾燥すると指先で灰色の砕片となる。極端な痩せた状態の中で、カビに近い菌類は菌糸で形態を維持し藻類は光合成産物を提供する。赤いのは盃状の子器で菌類としての繁殖器。学名は菌類として命名されるという。
230 赤い血 投稿日時: 2013年5月24日 投稿者: nizaemon 林道で見つけた切断された白樺。昨年11月の湿った重たいドカ雪で折れた樹を片付けたのであろう。根は生きていて、この春、新芽を精いっぱい吹き出すべく樹液を汲みあげたが、如何せんその先はなかった。白い樹皮に赤い血。甘い樹液に天然の酵母が飛び込んで発酵し、さらに赤かびの一種が繁殖したらしい。一つの命に、たくさんの生命体がぶら下がっている。やるせなさが残る春の不条理。
229 春を数えて 投稿日時: 2013年5月21日 投稿者: nizaemon 春を迎えて輝くような萌黄の林。1944年、今から69年前、左に見える斜面の昭和新山は激しい噴火を繰り返し、この風景は火山灰で覆われていた。噴火の終息後、先ずやって来たのがこのドロノキだ。パイオニアツリーとして先陣を張り、同胞ともども風雪をともにしてはたから見ても惚れ惚れとする一斉林。でも寿命は百年足らずで、数十年先にはこの姿はない。林内ではミズキ、ハリギリ、ミズナラなど次世代が育っている。
228 哀れ春の雄花 投稿日時: 2013年5月12日 投稿者: nizaemon 昨年11月の湿った大雪で、一夜にして多くの樹や枝が折れてしまった。根雪に埋まっていた折れたドロノキの大枝が、オオウバユリの新芽の上で雄花を咲かせている。珊瑚のような、血のような、因縁めいた春の色。ドロノキはここ昭和新山に先駆植物として、火山灰の上に生をなしたPopulus 属(ヤマナラシ属)のヤナギだ。雌雄異株で、雌株の花序は綿毛となり、Salix属(ヤナギ属)より遅れて柳絮となり新開地をめざす。
227 キノコの気もち 投稿日時: 2013年5月12日 投稿者: nizaemon スイセンが咲き始めたので、例年のようにサクランボウの樹の下でアミガサタケを探した。狙いは見事に外れ、今年は台所の脇で10個見つかった。なぜ発生場所が変わったのか、キノコが何を考えているかは判らない。大体にして地中の暗くカビ臭い世界のことだ。しかし、乾燥させると見事に香りの高い「セップ」となる。食べ方は良く知っている。クリームにもバターにも、鶏肉にもよく合う。生食は毒。
226 有珠山残照 投稿日時: 2013年5月6日 投稿者: nizaemon 朝から雲は低く、日中通しての小ぬか雨。今日の雨は芽吹きを促す恵みの五月雨と思い庭にやってきていたコムクドリを数えていたら、突然の夕映え。こんな日もあるのだ。低気圧が津軽海峡を東へ横切って、弱い冬型の気圧配置。西から地上に光が入ってこれこの通り。人生、捨てたものじゃない。地上のものすべてが赤く染まった中、いつもの有珠山ビュウポイントへ急いだ。田圃に水が入っていてこの風景となった。
224 二万年前を歩く 投稿日時: 2013年4月30日 投稿者: nizaemon ドンコロ山の北火口壁を歩いた。有珠山と同じ頃(約2万年前)に出来たスコリア火山だ。均一なスコリア噴石の堆積で出来ているので、2万年の風雪の中で南半分は流れてしまっている。しかし火口外壁からはこの小ぶりの火山の概略が良くつかめる。とろけてしまう前の生成時の火口は見事だったのだろう。壮瞥の町並み、昭和新山、有珠山、洞爺湖を見渡せる、まだ緑の無い落葉樹林からの眺望は見事なものだ。
222 北へ逃げたダフネ 投稿日時: 2013年4月29日 投稿者: nizaemon 北の落葉樹林の明るい南斜面にナニワズが咲いている。北海道には数少ない常緑の花木だ。夏には葉を落とすので「ナツボウズ」の異名がある。スプリング・エフェメラル(Spring ephemeral)=春の妖精 の木本バージョンだ。Daphne 属、だとすると、ジンチョウゲ属、沈丁花の仲間だ。川の神の娘ダフネはアポロンの求愛を逃れて、やがて樹に姿を変えたという。春先の林床に秘められた隠しきれない恋の残り香。