620 落暉のあたり

有珠山 外輪の夕日根雪も消えつつある有珠山外輪に陽が落ちる。雪消が生み出す水蒸気は低い霧となって夕日を滲ませ、風景を赤く染める。だがそれは一瞬のこと、息をのむ間に色は褪せ、光も失われる。陽の落ちたあたりは四十三山から旧登山道をつめて外輪に出て間もなくの場所、昭和新山、壮瞥の街を足元に見る大観望だ。雪が消え、あとふた月もするとその場所に立つことができる。

619 昭和新山意気軒高

昭和新山夕方4時、窓越しにふと見上げたら昭和新山のドームから見事に噴気が上がっている。風が弱く、湿度も高い、気温も低い。このところ降り積もった雪も融けて水分も補給されたのであろう。いくつもの条件がそろっての濛々たる噴気。往時をしのばせる大量の噴気を見ると、なぜかわくわくする。大地の営みが伝わってくる。元気をもらえる。

618 エゾヤナギ

エゾヤナギ近所の団地に若く樹形の良いヤナギがあって、赤みを増した枝先に白銀色の猫毛(果穂)が光っている。この個体は黒松内産の幼樹を移植して7~8年と説明を受けた。樹の下の落ち葉の中に大きな托葉の付いた葉を見つけた。持ち帰って手持ちの腊葉標本と照合したら、まさしくこれはエゾヤナギ。大ぶりできれいな猫毛の果穂は水に差しておくと長持ちするので、花序の観察ができる。

617 給餌台の客

シジュウカラ手製の餌台。ペットボトルの底を切り取って、逆さまにしてヒマワリの種子が入っている。ボトルの肩のあたりに、種子がやっとつまみ出せるほどの穴をあけてある。天井の板に穴をあけ、ボトルを差し込み、鉢底皿で蓋をする。もう春だというのにシジュウカラとシメ、それとアカゲラが来てくれただけ。常連客のヤマガラ、ゴジュウカラ、ハシブトガラはやってこなかった。

616 新しい顔

フクジュソウ裏庭のリンゴの樹の下の根雪に円い土の輪が開いて、今年もフクジュソウの蕾が顔を出しました。我が家の今年初めての花です。数えたら五個、まだ雪の下にもあるかな。あと、二日もするとパッと金色に光輝くパラボナの曲面が見られるのだが、こうやって顔を出してくれた辺りが何とも嬉しい。ことしの庭の花たちの先駆けだ。どんな庭が出来上がるのだろう。

614 カラスの下着

ハシボソガラス冷たい北西の風が吹きつけて、ハシボソガラスの胸の羽毛が、一瞬のことですが分かれました。灰色の軟らかそうな綿毛が見えました。伊達紋別港のカラスです。後ろのテトラポッドの雪の白さには負けますが、青みがかった黒く艶やかな羽根の下はグレイのダウンの下着でした。嘴には雪が、脚の爪には氷がついています。寒くはないのですか。

613 この群青

洞爺湖この青さはなんだ?と思った。洞爺湖を見下ろせる丘まで駆け上がった。地吹雪の後の新雪が眩いからではない。ブルーブラックの万年筆のインクの色だ。 陽の光は私の背後から、強い風は中島の向こう北西からこちらへと吹いていて、一面の縮緬波。つまり波の斜面がこちらに向いていて、明るい空を反映していないのだ。これが洞爺湖の水の色、冷たく沈んだネイビーブルー。

612 三月の冬

昭和新山2月28日には雪がほとんどない風景だったが、2日して3月の春になったはずが冬に逆戻り。フキノトウ、フクジュソウのことを考えていたのだが。上富良野では6月に雪が降ったこともある。自然現象はもともと規格にあわないのが当たり前だ。我々は受け入れるしかない。軟らかなレンガ色だった昭和新山も、今朝は冬色だ。

611 きのうの今日

吹雪昨日は遠くに光る輝く山を見た。今朝は猛烈な吹雪。窓枠も雪が張り付いている。明け方、風の音で目が覚めた。朝食中に家の前で一台スタックして手伝いに出た。吹溜りができて人も歩けない。今年は雪が少ないうちに季節もあいまいにうつろうか、と思っていたが何とかけじめが付きそうだ。

610 白い山なみ

オロフレ、ホロホロ春が近いとみて、樹の芽の観察に近くの山へ出かけた。私の住む町の向こう側、北北東の方向に白い山なみが見える。右がオロフレ山、左奥がホロホロ山と徳舜瞥山の双耳峰。こんな風景の下に暮らしているなんて、とてもとても嬉しい。砂利道、坂道のある町に住みたいと思っていた。川の流れる町も好きだ。カモメの飛んでいる海の町も好きだ。都会には住みたくない。