758 五月の光

イゴール・ミトライ・「月の光」ゴールデンウイークがやって来た。この数日で草花の蕾は開き、硬かった樹々の芽も殻を脱ぎ捨てて若緑に萌え始める。これぞ北海道の春。梅も桜もリンゴもサクランボウも、この五月のうちに満開となる。ここは有珠山噴火記念公園。湖を一周する「とうや湖ぐるっと彫刻公園」には58基の彫刻がある。青空に羊蹄山が白く輝く。イゴール・ミトライ作の彫刻「月の光」も眩しげだ。

757 ランボッケ(蘭法華)岬

ランボッケ岬道央自動車道冨浦パーキング(上り室蘭方面)にはランボッケ岬と富浦漁港を見下ろす展望台がある。岬の崖には6㎞北にあるクッタラ火山からの火砕流が溶結した、厚い凝灰岩(Kt-e層)がはっきりと確認できる。その下の明るい色はKt-f、Kt-iだという。展望台入り口には道央自動車道工事中にパーキング近くのKt-i層から見つかった登別化石林の解説板がある。

756 壮瞥穴 2017

壮瞥穴「うちの畑に穴が開いた」松本さんからの知らせ。雪を残す有珠山を背景に、耕作前の広大な農地に案内されると在りました、見事な壮瞥穴。地表部は80×90㎝、50㎝下に穴の本体があって直径35×30㎝、深さは240㎝だった。一昨年は私の裏庭にも開いて学生を連れた先生もやってきた。過去に生育していた大木が噴火堆積物に埋没し、腐植して空洞になったものだ。

755 私はカモメ

オオセグロカモメЯ Чайка 。チェーホフも書いた。テレシコーワも使った。チャイカはカモメ。写真はオオセグロカモメ。北海道野鳥図鑑にはТихоокеанская чайка となっている。  訳すると「太平洋カモメ」だ。4月18日、春の嵐は荒れに荒れた。強風は植え付けたばかりの野菜に被害を与えた。翌日有珠の砂浜へ出かけると、大波で打ちあげられたホタテをオオセグロカモメたちが争って食べていた。

754 エゾアカガエル

エゾアカガエルの卵塊エゾアカガエル林道わきの根雪が水溜りになって残っている。そんな環境を見つけ出し、エゾアカガエル(Rana pirica)が集まって産卵する。足元に生き物たちの春を実感する一瞬だ。トノサマガエル、ダルマガエルを含む Rana 属の北海道産はこの一種のみ。種小名 pirica はアイヌ語の「美しい」からきている。

静寂の中、ゆっくりとしかし確実に時は刻まれている。樹の芽は動かず、地表を動き回るものは見つからない。私の思考もすでに純化されてしまって、ただ佇んでいるだけだ。春浅い冷たい水で、いのちは復活する。卵塊のブツブツを見ていると「生命は泡から誕生」した、春の生き物は「枯葉から蘇る」と思ってしまう。

753 大有珠ドームの赤レンガ

大有珠溶岩円頂丘有珠山火口展望台からドームを見上げると赤土がへばり付いているように見える。これは1853年の噴火でせりあがった高温の溶岩上で粘土や土壌が焼かれ昭和新山のように煉瓦化したという。地質図幅説明書によると、この噴火で一面に赤くひかる大有珠溶岩円頂丘(アシリヌプリ・新山の意)が現れたとある。二年後に描かれた大有珠の噴気が描かれた長沢盛至のスケッチも載っている。

752 グリーンタフ

グリーンタフ道央西部は樽前、登別、有珠 、羊蹄、ニセコと火成岩地帯だが、その西南部には新第三紀中新世~鮮新世の火山噴出物の堆積がある。緑色を帯びた緑色凝灰岩( green tuff )は東北・中部地方の日本海側に広がって分布している。旧石器時代に道南で使われた珪質頁岩を探して国縫川を遡ったら、転石の中から冬の凍結で剥離した標本を得た。この川岸では随所で露頭の観察でき、正面奥の崖面もグリーンタフだ。

751 尻別岳

尻別岳春四月、洞爺湖中島の丸い尾根の先にすっくと立ちあがる残雪の尻別岳(1107m)。大きく抉れた山体だが、まさしく火山。喜茂別町鈴川あたりから見ると羊蹄山とこの山は二つ並んで、同形の秀麗な山容が楽しめる。西側は真狩村で裾野の美原地区には国立ジャガイモ種苗センターや村営牧場が広がり、3㎞離れた軍人山(561m)は尻別岳の山体崩壊の名残りだという。

750 アカゲラの春

アカゲラの春雪が少なかった分地中深くまで凍てついていて、土に埋もれていたサクランボの古い薪を掘り起こすのに苦労した。上に積み上げて置いたら、目敏く見つけたのが雄のアカゲラ。この冬は一度もやってこなかったのに、何を目印にここに辿り着いたのか。腹が空いていればこその、しかしあたり前の鋭い感性で、長いくちばしで朽ちた材を弾き飛ばしている。春の光のなかの眩しい命。

749 イタンキの春

イタンキ浜月齢5,0日。中潮とはいうものの潮位は充分下がった。春めいた鳴り砂のイタンキ浜。日曜の昼下がり、潮の引いた浜辺を楽しむ人を撮っていたら、背後、中空から楽しむ人もやって来て驚いた。この浜だけは昔日の面影を残していて、ここを歩ける人は幸いだ。明るい大気に潮の香と春の海の海藻の臭いが混じっている。なんという芳醇な世界。潤沢極まりない時間が流れる。