137 分布は北満、樺太、北海道 投稿日時: 2012年10月10日 投稿者: nizaemon チョウセンゴミシは日本薬局方にも載っている古くから知られた生薬だ。五味子とは含まれる甘味・酸味・辛味・塩(鹹)味・苦味に由来すると言う。秋の日の午後、長流川の上流で以前に見つけておいた株を友人を伴って見に行った。数年前から「ぜひ案内しよう」と約束していた場所だ。瀬音のする山合いに夕闇の迫る頃、ほのかに赤く色付いた幾つかの房に再会。ウスリーの作家、バイコフを教えてくれた旧友との約束がこれで果たせたというものだ。
135 トルコ玉の秘密 投稿日時: 2012年9月26日 投稿者: nizaemon この実が食べられないことは誰に教えられることなく、子どもの頃みんな知っていた。いつもある野生の色としては群を抜いて違和感のある色と思っていた。トルコ玉の色を知ったのはずいぶん後のことなのだが、いまでも草むらで見つけてハッとする。この植物、ノブドウ本来の果実は小さく緑色だが、タマバエ類の幼虫が住み付いたことで出来た虫えい(虫こぶ)に由来する。こんなに目立つ色を持つ理由は生態系の中でどのような意味を持つのだろうか。
134 いにしえの味 投稿日時: 2012年9月26日 投稿者: nizaemon 秋の楽しみの一つはこのトウモロコシ。ブルーブラックのインクがしみこんだような「モチキビ」。ホロホロと粒が締まっていて食べやすく、歯に纏いつく感触とほのかな甘みが何とも言えない。豊かな旨さがあるのだ。親指の腹全部を使って横もぎをすると芋虫のような形になって掌に転がる。黄色で軟らかく甘さを誇るだけの今のは私にとって全然ダメ。甘けりゃいいというものではない。糖度を競う甘いだけで青臭さのないトマトも同類だ。「昔はよかったね~」。
133 野生の香り 投稿日時: 2012年9月24日 投稿者: nizaemon 収穫を終えて乾燥中のアズキの畑を見に出かけたらこの通り風にそよぐホップの野生種カラハナソウのつるを見つけた。アズキ畑の向こうは壮瞥の町。栽培種のものとは違うというが、なんとなく気になる存在だ。農文協の「趣味の酒作り」には野生のホップの雌花を使うと載っていた。ビールに芳香と爽快な苦み、雑菌の繁殖を抑え、泡立ちを良くするという。いいとこ尽くめだがそう簡単にはいかないだろう。含まれる天然酵母を利用してドブロクを作ろうか。
131 地味な隣人 ヤチダモ 投稿日時: 2012年9月24日 投稿者: nizaemon この季節、はるか遠くからでも気になるのがこの樹の果実。種子が入った翼果は桃色を帯び黄色く陽に映えて、濃緑の葉の中に花が群がって付いているようで、この時期だけはひときわ目を引く。湿地を好むのでヤチダモ「谷地梻」。ハルニレ、センノキなどと並んで北海道を代表する樹だ。材は杢がはっきりしていて木工品に使われる。トドノネオオワタムシ(ユキムシ)はトドノキの根で単為生殖で数世代を過ごし、初冬、ヤチダモを目指して風に乗り飛行する。
129 南国の仇花(あだばな) 投稿日時: 2012年9月24日 投稿者: nizaemon ホテイアオイの花が咲いた。夏にはピータン甕を水蓮鉢に見立てて水を張り金魚屋からこの水草を買う。こんなに見事な花が咲いたのは初めてだ。よっぽど暑かった夏なのだ。もとは熱帯、亜熱帯の植物だが温暖化と人の手により生息域を広げ世界中で増えて環境を壊している。日本では関東地方まで北上中だ。よく似た植物で古来から知られたミズアオイが北海道でも可憐な青い花を咲かせるがこちらの花は日本中で激減している。撹乱と侵略の世界。
127 秋めいて 投稿日時: 2012年9月23日 投稿者: nizaemon 長かった暑い夏も、景色の中ではやっと秋の気配。昭和新山の煉瓦色のドーム下の屋根山には葉を落としたドロノキが浮き立つように良く見える。パイオニアツリーとして発芽し、60年経った今、一抱えもある大木に育った。無から始まって60年経った森は三松正夫の遺志のままにいよいよ深く、そして着実に遷移の道をたどっている。粗い火山灰の混じった手前の畑はハナマメの適地だ。隣の畑ではアズキが見事に実った。どちらも壮瞥町自慢の逸品。
122 いずこへ 投稿日時: 2012年8月30日 投稿者: nizaemon 壮瞥温泉の湖岸で出会ったワカサギの群れ。幅1m位で全く途切れずに同じ方向へと延々といつまでも続いていた。膨大な量だ。私が今回たまたま出会ったのであろうか。いつものことで、驚くに足らないことなのだろうか。このような豊かさを洞爺湖で見られた悦びは、この湖への私の認識をがらりと変えてしまった。これだけの数の生きものは何かによって養われているのだし、何かを養っているのだ。潜ってみなけりゃわからない世界。
121 潤沢の証人 投稿日時: 2012年8月30日 投稿者: nizaemon 観光客の多い少し賑やかな壮瞥温泉の湖畔を潜ってみた。壮瞥滝付近とは大違い、みごとに豊かな生物たちの姿に出会った。要するに「富栄養化」の世界が有った。アオミドロ( Spirogyra sp.)に被われた軟らかな世界に、たくさんのスジエビが遊んでいる。ヨシノボリの顔も見えている。陽光の届く豊潤な世界だ。潤沢な生物相を示すのは恒常的にリンや窒素などの栄養塩類が補給される、水陸相まっての生物生産が活発な地域である証しなのであろう。
120 生き急ぐ 投稿日時: 2012年8月27日 投稿者: nizaemon ドロノキの落葉が始まった。8月末の昭和新山の山麓、緑濃い森の中にこの樹の根もとだけ厚い落ち葉が積み重なってゆく。ドロノキはハンノキ類とともに陽樹の代表的存在だ。7月には種子を充実させ綿毛で風に乗る。荒廃した火山灰地や河原などに着地した種子はその年の内に発芽し根を下ろす。葉は窒素分が多く良い土壌を作ると言う。なぜこの季節に葉を落とすかについては諸説が有るらしい。大木になるが寿命は百年程度。ある意味で明快な木だ。