398  したたかなマメ

クズクズの花が盛りだ。ヤマブドウ、サルナシ(コクワ)、ツルアジサイ、ツタウルシなどと同じように林縁を被うマント群落を構成する。この地域ではクズの蔓延りようは急激で目に余るものがある。火山堆積物を説明するジオサイトも我々がクズバスターとなってクズを退治しなければならない。縄文の昔からの葛粉や葛布を作り家畜の餌とし漢方薬にまで多用した多彩な文化は蝦夷地にはまだないが、この花の「ファンタグレープ」の香りにはなぜか惹きつけられる。

397  蚕食された四十三山

四十三山先日、マイスター仲間のI氏から四十三山(よそみやま=明治43年に噴火、隆起した)周辺にマイマイガが発生しているとの情報があった。それはこの画像のちょうど向こう側。盛夏、緑に覆われているはずの四十三山が食害にあって白っぽく色が抜け落ちて見える。ほとんどがドロノキで、この時期、本来なら雌の樹の綿毛をつけた朔果が見事なのだが、襤褸布が裸木に引っかかっているようで実に貧相で可哀そうな限りだ。

396  湖畔のハマナス

ハマナス北海道の海岸に多い野生種のバラ。洞爺湖畔のものは植栽によると思われるが、北の湖の風情によく映る。東アジアが分布の中心で、朝鮮半島、サハリン、カムチャツカ半島にも自生するという。強い野性味のある香りと頑強さでバラ類の品種改良に使われるが、欠点は枝の棘の多さで、切り取って飾ろうにも摘まむ隙間もない。その辺りがこの花の魅力と生き残る武器なのであろう

390  嬉しい紅白

ユスラウメユスラウメの花が好きで、それとあの深紅で鈴なりに生る実が好きで、2本別々にネットで購入したら、嬉しいことに片方は白実のユスラウメだった。こんな間違いも有るのだ。今思い返しても愉快になる。人生捨てたものではない。ほのかな甘みとほのかな酸味。酸っぱいのが苦手な私には丁度良い。そのままも美味しいが何にしようか。サクランボの種抜きで種を抜いて紅白織り交ぜてゼリー寄せ、いや夏だから葉をあしらって和風に寒天寄せか。

389  ヤマシロオニグモ 

ヤマシロオニグモ裏庭への階段を上がり花軸を伸ばしたユッカの横で見事に張られた蜘蛛の網に顔を突っ込む。私の顔中の細毛剛毛が触毛となり、アッと叫んで瞬間意識が昇華する。瞬間藪の中の獣の末裔だったことを思い出す。梅干大のオニグモより少し小型で、背の白斑からこの種の背白型の雌と確認した。夜間強靭な網を張り昼間はユッカの蕾の間で寝ている。背の模様は色々あるらしく雄は異なる形だというから興味がわいた。

 

388  コシカギク

コシカギクコード式の刈払機で道路際を刈っていたらむせるような甘い匂いに一瞬手を停めた。「かみつれ」、そうカモミールだ。しかし形態が少し違う。舌状花がない。すべて管状花の円いぼんぼり。調べたらコシカギク。英名Pineapple-weed。ヨーロッパ、北米に普遍的で、道路わきの踏みつけ環境で生育するとある。どの地でも頭花を食べ、ハーブティーにし乾燥して香りを楽しむ。雑草という乱暴な考え方は自然界には無い。

387  開拓と火の山と

クリの花家の前の原っぱに大きなクリの木があって今白い花の真っ盛り。向うに見える熔岩ドームは昭和新山の天然煉瓦。上昇した高温の溶岩に焼かれた煉瓦被膜の赤いドームだ。クリの樹は困難な開拓地でのたつきの証し。この町にはふた抱えもあるクリの巨木がたくさんある。この町の人々は入植後、1911年、1944年(昭和新山)、1977年、2000年と4回の有珠山噴火を経験した。

386  有珠火山があって

佐藤錦初夏の北海道太平洋沿岸には海霧が湧く。海際から十数kmの、ここ壮瞥の町は有珠山が衝立となって噴火湾からの海霧はやってこない。有珠火山あっての果樹栽培地帯だ。地形の少しの違いが豊穣をもたらす。ブドウ、洋ナシ、プルーン、サクランボウ。リンゴに到っては三十数種類が栽培されている。わが家の古いサクランボウの樹からの今年最後の収穫がこれ。大地に乾杯!!

385  違う風景

ビル街東京上野泊。13階からの風景がこれ。一見清潔風だが、違和感がこみ上げる。白い瘡蓋のような街。かつて訪れたうんこ色の大気に包まれたカルカッタの市街も、排気ガスに澱んだ喧騒のカトマンズももっと人間臭い街だった。ここには緑がない。「ヒト」が見えない。黒い土はどこだ。 ビル群の向こうにはベイエリア、窓の逆方向には上野公園。大東京の新旧の顔も見られるはずなのだが。人間世界の終焉の風景か。

383  束の間の赤紫

ムラサキツユクサ庭の半日陰にムラサキツユクサが咲いた。明け方に咲いて、午後には打ちしおれてしまってもう見る影もない。アサガオなどと同じ一日花なのだ。しぼんだ花を摘むと指先が赤紫になる。短命な花の名残りの色。高校の生物で習った原形質流動、葉の気孔はたしかこの花だったと思い、60Xの実体顕微鏡で覗いてみた。雄蕊の数珠状の細胞は見えたが原形質まではだめだった。気孔は辛うじて見え、孔辺細胞、副細胞も確認できた。半世紀前が懐かしい。