51 春の兆し

ハシボソガラス 群れを作ってオープンスペースと昭和新山の山麓にある塒を行き来していたカラスたちにも、冬を終えつがいの結び付きが濃くなる季節がやってきている。名残りの淡雪の中、飛び立つ一羽を追うカラス。新しいハシボソガラスのカップルがまた一つ増えるのかもしれない。遠目に見る樹の枝先も軟らかな色合いを増してきている。北国にも待ちに待った春の訪れがすぐそこまで来ている。

50 大仮宿(おおかりやど)

大仮宿(グーグルアースによる) 3,11東日本大震災から一年経った。全国の死者・行方不明者は1万9510人にのぼるという。私は昔から海が好きだったからとても心が痛む。被害の大きかった釜石の近くに、大仮宿という小さな入り江と砂浜がある。気がかりでグーグルアースで見たら津波が奥へ280mも駆け上がった痕跡があった。地形図に合わせると到達地点の高さは海面から30mほどだ。緑の草地は消え、一つ建物の基礎部分だけが残っている。

C.emydiaベッコウシロガイ とN.gloriosaサクラアオガイ 26年前、ここの海岸でカサガイの調査をした。手元に百数十個の標本が残っている。オオカリヤド Lamminaria zone=コンブ帯。今は属名が変わっているが北太平洋種のCollisella emydia ベッコウシロガイと暖かい海からの Notoacmea gloriosa サクラアオガイ、よく似た種が同時に見つかった。北と南の生きものたちの接点三陸の海。その時この浜の番屋でとても甘いコーヒーと暖かい食事をたっぷり御馳走になった。冷えきった身体に好意が嬉しかった。お世話になった人はそこにはすでにいないとしても、今回の津波で番屋にいた人たちは無事だったのだろうか。この浜では明治26年(1896年)、明治三陸大津波で84名が命を失っている。  津波から一年過ぎて、海中の生きものたちは復活し、元の自然に戻ったであろう。でも何時か、きっとまた大津波はここにやってくる。 たまたま私がかかわった、間口100mほどの小さな浜での出来事だが、私たちはあたりまえの自然の中で、その自然をどう生きればよいのかを、あらためて問われている。

46 この夫婦

ハシボソガラスの夫婦 一昨年、向かいのトドマツの巣で生まれた同腹のハシボソガラス。一緒に巣立ち、つがいになって、去年は三羽の雛を育てました。子供たちは巣立って行ったけど、片方の足が悪かった一羽はその後どうなったでしょうか。厳しい冬を越し、いま春が近づいて寄り添う二人です。向かって右が亭主。しかし去年、トドマツの林は伐られてしまいました。この夫婦、何処に巣を作るのやら。

45 イガイ Mytilus coruscus

美味しいイガイ 室蘭産のイガイMytilus coruscus ワインで蒸し、大粒を頬張る。磯の香りが口いっぱいに広がる。縄文時代から今に続く海の民の官能。オレンジ色は卵巣だ。殻の内面は碧緑に輝く真珠色。たまにしゃりっと身の中の小ガニが歯に当たる。それは寄生ガニのピンノテラ。思わぬ甲殻の味わいも余禄にいただく。当地には大きく幅広のエゾイガイCrenomytilus grayanus も産する。

42 椴の森で

椴の森で 児童館の冬の里山観察会はマイナス4℃の中で行われました。子供達には初めてのスノ―シュー体験でした。キタキツネとエゾシカの足あとを追って小さな雪原と、少し冒険しての椴の森へと分け入りました。跳ねたり走ったり、こどもたちの身体能力に圧倒されてしまいました。足跡や木の実の食べかすなどから、冬の生き物たちのたくましさを発見しました。有珠山の1663年噴火の軽石層(Us-b)も見にゆきました。

41 食べたのは 誰?

食べたのは 陽のあたる雪のとけた里山の南斜面、春を待ちかねていたロゼット葉がいくつも見つかる。マツカサの芯と苞鱗も散らかっている。吹雪で落とされたアカマツの葉と一緒だったマツカサを分解してみたら、翼のついた小さな種子が見つかった。秋に蓄えたものでは足らずに、これを食べて厳しい冬を越した生き物がいます。食べたのは誰?   それは冬眠しないエゾリスです。

40 うるさいやつら 

食いしん坊のヒヨドリ 腹のすいたヒヨドリが2羽、台所の窓の向こうのサクランボの木にやってきている。縄張り性が強く食べ物をめぐって他の鳥達といつもいさかいをおこしているようにも見えるが、かれらは生きることに真面目で懸命なのだ。ヒヨドリは秋の終わり群れを作り津軽海峡を南へ渡る。ハヤブサの攻撃を避けながら、海面すれすれに命をかけて竜飛岬へと渡るNHKの映像を見てひどく感動した。

39 春告げ魚 ニシン

ニシン 春告げ魚は各地にあるが、北海道では間違いなくニシン。よいニシンが手に入った。鱗がそろっていて剝れていない。余市産、体長36cm。新鮮で、バラけた腹子は手、包丁、シンク、至る所にくっついてしまう。海では海藻に付くのだが、これは我が家で美味しく食べてしまう。小さな命から大きな生きものまで、食物連鎖という膨大な浪費の上に我々の生命の星は成り立っている。

38 ロッドユールのカエル

ロッドユールが来たらしい ロッドユールが来ていったらしい。カエルのひぼしとボタンが残されていた。これは彼のコレクション。暖かくなったら、またそっと来てくれるだろう。                                                                                                                                    去年の夏、網戸の隙間から入り込ん で、綿ごみを纏いながらカーテンの下で乾ききったニホンアマガエル。だれしも半年先の自分の運命はわからぬもの。5月になって土の香りがしてきたら草むらの中に戻してやるつもりだ。

37 流れ者 エチゼンクラゲ

エチゼンクラゲ アルトリ岬で見つけた裏返しのエチゼンクラゲ。 近年各地の沿岸で漁業を妨害し話題になっている。1958年、室蘭の砂浜に径1mをほどの個体がたくさん漂着し、足で上に乗ってもつぶれなかった経験がある。その年はサンマ漁に被害を与えた。大きいが遊泳能力が弱いのでプランクトンに含まれる。東シナ海が出発点という。あらためて海は南も北も繋がっていると感じる。