キツツキは啄木鳥と書かれる。啄は「啄ばむ」ついばむ=食べるの意味だ。学名はDendrocopos major でヨーロッパからアジアの寒冷地に分布している。 Dendrocopos は植物をつつく、 majorは大きいの意味で、コアカゲラ Dendrocopos minor に対応し命名されている。裏庭のサクランボウの古木にやって来る後頭部が派手なスカーレットの飾り毛のある雄だ。樹を叩く時の強力な支えとなる、黒い燕尾服の下の腰回りも雌雄そろって派手なこの色だ。
北の海の冬季代表は何と言ってもホタテ。噴火湾で養殖され、4~5年物が出回っている。英名 Scallop で総称される Pectinidae の中でも特筆される食材。まして種小名 yessoensis は蝦夷地のこと。ならば北海道人としては誇るに値するまさしく自慢の逸品だ。
写真のローズマリー側から左へ、外套膜、鰓、右外套膜、閉殻筋(貝柱)、中腸線。いずれも食感、味に際立つ個性がある。大きな貝柱の横に付いている小柱(写真左上)は殻を閉じっぱなしにする平滑筋からなる補助閉殻筋で、コリコリしたなんともよい食感を持っていて、私の最も好きな部位だ。緑褐色の中腸腺は肝臓の働きを持ち、貝毒などをため込むことがあるので通常は食べないが、なかなか「濃い」レバー味が有ってこれまた旨い。ローズマリーの右にあるのはボイルした卵巣で、精巣は白みを帯びる。
乾物の貝柱は中華料理では世に聞こえた名品で、外貨獲得のお役に立っているが、われわれが日常手にするホタテは、採れたての絶大なる美味しさがあるうえ、食材としての使い勝手や値段もお手ごろで、貝柱の刺身、殻つきのバター醤油焼き、炊き込み飯などお馴染みのメニューにおさまっているようだ。だが、産卵期(春)前のたっぷりと太って豊潤な旨さの満ちた生殖巣や、外套膜の濃厚な食味は主役たる貝柱に負けない逸材である。鮮度の良いホタテが入手できることを最良の武器に、その風味を生かすことが出来れば、濃厚ながら穏やかな味わいは他の食材や調味料、ソース類との相性も良く、多様な料理へと進化できよう。現地人たるもの、この卓越した可能性を眠らせてはならない。