284 流木に乗って

フナクイムシ室蘭イタンキ浜。ハマエンドウの繁みの中に流木が見つかった。何処からやって来たのか材は見事にフナクイムシ(shipworm)に喰われている。ひとつの穴に1個体ずつ、二枚貝のフナクイムシがセルロースを食べながら棲みついた痕跡だ。掘り進みながら石灰質の内張りを作る。まさしくトンネルのシールド工法。ここの海岸には軟らかい岩石に穿孔するカモメガイも生息している。

283 木陰の炎

マムシグサこの季節遠目にも気付くマムシグサの赤い実。テンナンショウ属の有毒植物だ。蓚酸カルシウムなどの毒成分により、一粒食べても口の中に灼熱感と激痛が走るという。洞爺湖中島の増えすぎたエゾシカの食害からも逃れている。ミノカサゴ、サンゴヘビなどと同様派手な色彩で自己の有毒を喧伝しているようにも見える。生態系という時空の中での進化の妙味だ。澱粉を含む塊茎は救荒植物だともいう。古来ヒトは無毒化させる手法を考案しながら食の文化を築き上げたが、それだけ過酷な自然を生きてきたということなのであろう。

279 リンゴとカラスと釣竿と

落とされたリンゴカラスに裏庭のリンゴを落とされて収穫が減ってしまった。今朝もまた荒らされて、それも私の好きな早生の津軽と王林。思い立って取り出したのが、以前芦ノ湖でコイ釣りに使っていた4.5mの愛竿。ABUのリールにはまだ200mの釣り糸が残っていて、竿先を操りながらクモが巣を作るように10数本の樹に糸を張り巡らした。カラス達はいま冬に向けて群れを構成中でいくつもの集団で出没している。個体間の順位もこの時期に決まる。カラスも私も冬の準備中。

278 傍目八目

スズメバチの巣パークゴルフ場からの昭和新山のガイド中にスズメバチの巣を見つけ、事務所に伝えた。同じ日の新聞に近くの豊浦町で草刈り中にスズメバチに刺され亡くなった方のニュースが載っていた。私も不注意から二の腕を刺されたことがある。最初の二日間は酷く腫れて痛みと灼熱感、次の一週間、腫れはは青紫に痛みは痒みに変わり、完治まで3週間。ここで見つけた巣は頭上2m。プレイに熱中している人には見えぬらしい。

273 洒落者

ニホンアマガエルエメラルドグリーンの葉裏の世界におさまった金彩の洒落者、その名もニホンアマガエル。いよッ、日本一!チーク色の眼過線も粋だね。19世紀フランスのセーブル窯に金地に緑釉のコーヒー茶碗がある。実にこんな感じだ。今年は気温が高く雨が多く、裏の庭には無数のアマガエルの子供たちがいる。でも、こうやっていっぱしの親になれるのはその数百分の一。

270 闇の香り

エビガラスズメ(♀)暗闇の中、ハマユウの香りがしたと思ったら、ブーンと重い羽音がする。瞬時にスズメガと考え、カメラを用意した。何枚か撮った中に長い吻が写ったこの一枚、調べたらエビガラスズメ。たまたま栽培中の長い花筒のハマユウだったが、北海道の闇の中では何に魅かれるのだろうか。この種の吻の長さは日本のスズメガでは最長だと言う。裏庭では花期が遅く香りの強い白花のギボウシが咲いている。ひょっとすると、、、。

265 艶やかな織姫

ナガコガンrグモ裏庭のラズベリーの繁みで金色に輝くクモを見つけた。調べたらナガコガネグモ(♀)。一瞬ジョロウグモかと思ったが、巣に白帯もあってこの種に確定。同科にはオニグモ属も含まれ、北海道でもよく見られる美しいイシサワオニグモの存在も頷ける。子供の頃、軒下の錆び色でどてっとしたオニグモを手でつまんでよく遊んだが、この華麗なクモには目が向かなかった。いま見ると心を震わすような艶美な生き物なのだが。

263 カモメの家

マスイチセ室蘭のマスイチの岬はアイヌ語マスイ・チセ­=カモメ・家から出た地名で、画面左端の岩を指す。この岩は屏風状の薄い二枚の岩で何時も風が通り抜けている。近くの入江はマスイチセ・トマリで向うの頂きはマタイコリの崖の頂上(154m)で、下の磯はケショラプモイ。深い海蝕洞のアフンルパルがある。「永田地名解」ではこの辺りを「鷲湾」だと言うが、今ではマスイチ展望台にはワシ・タカ類の渡りの観察に愛好者が集まる。

260 アブの夏

ヤマトアブこの町には川や牧場があって、ガラス窓に音を立ててよくアブがぶつかる。これはヤマトアブか。昆虫のハエ目に分類され、ハエ、アブ、カ、ブユは同じグループだ。この連中、本来あるべき四枚の翅は二枚となり、あとは飛翔時にバランスをとる平均棍となっている。日焼けの肌に瞬時にサクリと小刀状の口器で傷を付け、血を舐め取る巧みさは実に野生的だ。叩かれてコロリと落ちるいさぎよさも夏の思い出。

259 カシワマイマイ

カシワマイマイマイマイガ(舞舞蛾)の近縁種カシワマイマイ。近所の桜の木に見事に群がっていた。北海道だけではなく日本各地で大量発生している。頭部や脚のスカーレット色が目立つ。右下の個体は♂で櫛状の触角をもつ。このグループ、広葉樹のみならず針葉樹や草本にいたるまで何でも食い荒らす広食性で知られる。大量発生はウイルスの蔓延によって終焉に向かうと言う。自然のシステムは不可思議かつ良くできている。