433  半世紀の間に

切り株の上のシラカバ森の中の切り株から伸びあがったシラカバ。腐植する針葉樹の大きな切り株の上で発芽したシラカバは根を伸ばし、切り株はいよいよ崩れてゆく。これは森の摂理、樹木の更新の形だ。シラカバが発芽したのは太さから35~40年くらい前のこと。ここは洞爺湖中島。鹿が増える前のことだろう。周囲の緑は鹿が嫌いなフッキソウ。向うの林はストローブマツ(人工林)。この風景から、半世紀ほどかかって作られたこの空間での自然の成り行きが見て取れる。

432  警戒色

マムシグサ洞爺湖中島の林内はエゾシカの食害で貧弱な植物相となっている。草本で目に着くのはハンゴンソウ、フッキソウ、フタリシズカ、クサギなどだ。この時期遠目がきく林内でよく目立つのはマムシグサの実。蓚酸が含まれ、口にすると哺乳類すべてひどい刺激を受けるのは必至で、この赤い色は警戒色なのだろう。しかし同じ赤い色でも無毒のものや甘いものもある。生き物たちはどうやって判別しているのか。

430  トドノネオオワタムシ

トドノネオオワタムシ山の黄葉が進んで、ふっと気温も緩み風が凪いだとき、いつものように雪虫に出会う。今日の裏庭は雪虫の吹雪のようで、ユキムシスープの中にいるようだった。どうしてもふわふわ飛ぶ雪虫を画像に収めたくて重いカメラを覗きながら700枚ほど写して使えた2枚がこれ。前肢を高く掲げ後肢をそろえ、凛と矜持を持って飛んでいる。心もとなくあやうくも見える雪虫の正体は小さくも強かな生命体だった。標準和名はトドノネオオワタムシ。ヤチダモなどの広葉樹とトドマツを宿主として移行、変態と単為生殖を繰り返す。いのちの複雑さと進化の妙である。生活史は北大の河野弘道博士により明らかにされた。

河野博士は縄文遺跡の貝塚をアイヌ儀礼の「物送り場」と考えたことでも知られる。これは現在の縄文文化を考える基本理念ともなっている。伊達市噴火湾文化研究所長・大島直行氏によるブログ、「縄文へのいざない」参照。http://jomon-heritage.org/blog/kouza/224

429  インディアンサマー

ベニシジミ数日小春日和が続いて、ベニシジミがコリウスの葉に止まっている。オツネントンボもそうだがこの季節昆虫達はとても温度に敏感で、風のない昼下がり、いろいろの虫たちに出会う。夏のベニシジミは翅の色も褪せてしまって見る影もないが、この季節になると春と同じ低温型の濃い色合いの翅に戻る。足早にやって来る冬に向かって、一瞬の秋の陽の光をむさぼっている。このチョウは成虫では越冬できない。彼女はそのことを知ってはいない。

427  秋サケをもらった

腹子の入ったサケ知人からサケをもらった。この時期、北海道の海岸ではごく当たり前にサケが獲れて店頭にもよく並ぶし、一匹まんまのやり取りもよくあることだ。上物のサケで75cmの堂々たる体躯。腹を割いたら立派な腹子が1kg近く採れた。腹子はガーゼに包み味噌漬けにすると素晴らしく旨くなる。イクラを作る今回はばらばらにして醤油味のイクラにする。もちアミの上で揉むか箸でしごくとほぐれる。サケの卵一粒が一匹の命、丈夫に出来ている。塩水で洗い、醤油とほんの少しの日本酒をかけ、たまに混ぜながら冷蔵庫に数日保管すると出来上がり。白い飯に合う、酒に合う、サラダにも。冷凍も可能だ。もちろん身の方も楽しむ。皮は滑るので軍手を着用。頭をとり、腹ビレのあたりで上下に分け、それから三枚にすると仕事は簡単。塩を振り身の水分をペーパータオルと新聞紙に吸いとらせ、あとは焼いても、煮ても思いのままだ。ただしイクラの入っている雌の味は一段落ちることを付け添える。

 

425  怪鳥?

ブドウトリバガ?窓に小さな羽虫。こんな時のデジカメは非常に有効だ。拡大してみると明らかにトリバガ。ブドウトリバガにそっくりだ。だとすると学名Nippoptilia vitisReptiliaは爬虫類なのだが Nippoptiliaは何を意味するのか。種小名vitis はブドウのこと。英名も Grape Plume Moth で私の庭でもブドウを作っている。だがブドウトリバガは北海道に分布しないという。分からないけど楽しい。

421  流れ藻を食べて

コブハクチョウ洞爺湖には渡りをするオオハクチョウ、コハクチョウの他に周年居ついているコブハクチョウがいる。北海道のコブハクチョウは1975年に大沼公園に導入されたという(北海道外来種データベース;北海道ブルーリスト2010による)。その末裔かどうかは分からないが、毎年、洞爺湖の湖岸のどこかで抱卵し、雛が孵っている。9月26日、昭和新山側の湖岸で1羽、北岸の水の駅付近で3羽ほど、洞爺湖温泉で2羽、見られた。

418  かわいそう

シマヘビ「あ、轢かれてる」。車を止め近づいてみるとシマヘビの子どもだった。「あら、かわいそう」通りかけたご婦人からも声が飛んだ。幼蛇の模様を残したきれいな蛇だ。先日、8月26日のブログ「405 青大将」とほぼ同じ場所の壮瞥町町役場まえ。遊具がある公園の入り口だ。ヘビがやって来る環境があるなんてここはいい町だ。轢かれちまった子どものヘビにはかわいそうだが。近くの藪まで運んでやったが、幼い生きものが死ぬなんて、ああ、かわいそう。

416  北海道の虫手拭

虫手ぬぐい北海道の虫たちがいっぱいプリントされている手拭をネットで買った。ウスバキチョウからサッポロフキバッタまで嬉しい顔?が揃っている。標本箱の中の整えられた形態ではなく、身近に見られる自然の姿なのがいい。種の判別が一目瞭然のイラストも嬉しい。どうやって飾ろうか。シャレた額がお似合いだ。

410  LかCか

エルタテハホワイトプラムの表皮に菌が付くとプルーンと似た紫色になる。発色の機序に何か秘密が、、と考え込んでいたら、やって来たのはエルタテハ。真剣に果汁を吸っている。このグループ、ひらひら飛んでいる時は分かりにくいが、いったん降り立つとそれぞれの色や形に際立つ判別点があって興味をそそられる。この種は羽裏の白斑がL字。Cならシータテハ。いま見かけるのは7月に羽化した新成虫。このままの姿で冬を越し、春一番の蝶となる。頑張れ。