1106 カラスの春

巣が撤去される寄添い囁き合うハシブトガラスのつがいを見守っていた。新居を構えたのは、何と40mもあるKDDIの基地局の鉄塔の上。昨日の朝、騒ぎたてる声に気付くと大袋を持った職員が巣の撤去中だった。聞くと卵も雛もまだ無かったという。巣材は枯枝ばかりで、都市部のような針金ハンガーは見つからなかった。その後、近くに樹の上で互いに羽繕いしあう姿が見られた。誰にも罪はないのだが。

 

1098 洞爺湖の巨鯉

洞爺湖のコイ釣り洞爺湖中島の地質の勉強会で仲間たちと船で回った時、饅頭島の岩礁の下に80㎝級の巨鯉を見た。澄んだ水の底、尾をゆっくりと撓らせて深みへと降りてゆく。そしてもう一尾。 いつか御対面願おうと夢見ていた。10~5万年前の噴火で誕生した風景の中で気宇壮大。Shakespeare 並継4.5mの愛竿3本。リールABU6500。道糸6号で自製釦仕掛け伊勢尼14号3本鈎。果してこれで通用するか。

1092 ヒメマス・塩乾し

ヒメマス・潮乾し洞爺湖畔に住む釣名人から塩をしたヒメマス(=チップ)を「これは美味しいよ」と頂いた。身が締まった分、味は豊穣さを増し、マス特有の香りも濃縮されていて、食べきる前に慌てて写真に撮った。 知里真志保・分類アイヌ語辞典動物編(1962)によると、kapatchep (ka-pat-chep カパッチェプ) [ kapar (うすい) chep (魚) ] 注、ヤマベ(ヤマメ)に比べれば扁平だと。とある。

1089 エゾギンチャクガイ

エゾギンチャクエゾギンチャクガイ。魚屋の店頭で見るのは初めてだ。ホタテなどのイタヤガイ科 Pectinidaeに属し、旨さと収穫量で北の海を席捲するホタテガイを筆頭にヒオウギガイ、アカザラガイ、イタヤガイなどが日本各地で少量が利用されている。小さいが貝柱とだしが出るのが身上。名は巾着袋に由来するが、北海道の海の民たちは殻の畝の筋張った形からババノテ(婆の手)と呼んでいた。

1080 深海魚・ゲンゲ

深海魚・ゲンゲ友人が白老近くの市場で買ったとゲンゲを届けてくれた。何にし負うゲンゲ科、すべて深海魚族で魚好きを自負する者として食指が動く。名前は知っていたが俎上に載せるのは初めて。醤油につけ脱水を図ったが身は締まらない。片栗粉にパン粉を合わせカリッと揚げたが、中身は正体不明の柔らかさ。味も香りも伝わってこなかった。この魚の本場、富山の食膳に倣うしか手は無いか。

1079 新山沼のハクチョウ

新山沼のハクチョウ昭和新山の誕生と同時にできた新山沼。-8度の寒中散歩の途中、沼にそそぐ壮瞥川にオオハクチョウを見つけた。川はまだ凍っていない。1.5㎞上流には壮瞥滝、そのすぐ先が不凍の洞爺湖。この流れにはヤマメ、コイ、ヨシノボリ、カワエビ、モクズガニが棲む。カルガモが水面を駆け抜け飛び立っていった。季節が回ると、マガモ、オシドリたちもやってきてにぎやかな水面となる。

1075 冷凍ブロッコリー

冷凍ブロッコリー雪の中の旨そうなブロッコリー。雪の畑の採り残しがいくつも顔を出していた。食べられるかなと手を伸ばした。触感は冷凍野菜が少し崩れたようにもろい。その上、この足跡はキタキツネのものか。キツネの食べ残し、いや、もしおしっこがかかっていたとしたら、話は違う。しかし、キツネと食べ物で競合し、分かち合う、そのようなあたりが丁度良いのかも。北の大地の食べ物の話。

1072 秋の終わり

新山沼カラマツがいい色になって、ポプラとコナラ、カシワがそれに続いて、いよいよ秋の終わり、けじめの時だ。昭和新山の噴火で堰き止められてできた新山沼に白き雪をかぶった有珠山の山頂が映っている。柔らかなヨシの穂も白く光っている。あと11月終わりにはカラマツは葉をすっかり落とし、佇まいは厳しい冬の様相となる。まもなく遠い北の国から水鳥たちがやってくる。

1066 命の軌跡

コウラナメクジ2000年噴火の噴火遺構を探索する人のみが歩く西山散策路。数日前の雨に洗われたアスファルトにいくつもの白い筋を見つけた。数十㎝の徐々に太くなる何かが這った痕跡。その端にやっと見つけたのは黒くカチカチの干乾びたナメクジの死骸だった。乾いたアスファルトに上でその命は終わってしまった。色から外来種コウラナメクジだろう。多様な自然の中の、生きた証しとその死。

1064 ミミズの溜め糞

ミミズの溜め糞裏庭のゴルフボール大の土の塊が気になっていた。やっとわかった作り手はミミズ。で、これは糞。ここの土は有珠山の火山灰が主だが、これを有機物ごとせっせと食べ、団粒構造にしては排出してくれる。昔読んだダーウインの中に、ミミズの糞は数百年で遺跡の石を地中に取り込んでしまうと書いてあった。土壌を攪拌し改良してくれる力強いミミズがたくさんいてくれるということだ。