166 凍てつく

洞爺湖の釣 12月になって洞爺湖の釣りは解禁となった。ヒメマス、サクラマス、ニジマス狙いで、立ちこんでのフライ。見えるだろうか、ラインが昭和新山の上でループを描き、有珠山山頂、有珠新山を絡め取るように流れている。釣れると大物、ひたすら竿を振る。1投、2投、キャスティングは続く。悠久の大地と清冽な水。やがて釣る人も景色にとけ、静かさの中で時はゆっくりと凍りついてゆく。

165 山は眠っているか

有珠山 どうやら根雪となった壮瞥の市街地から見た有珠山。高く連なるのは大有珠ドームで、頂上は海抜733m、平らにのびるのは外輪(海抜約500m)。緑に包まれた夏の有珠山もよいが、白銀に輝く有珠山はいかにも火山然としていて火山フリークにとっては実に魅力的な山だ。だが、次の噴火はいつなのか。山は眠っているか。眼ざめはいつか。手前の建物は壮瞥町役場。

164 北国の常緑広葉樹

ツルマサキ 薄氷の張る壮瞥川の岸でツルマサキの赤い実を見つけた。この地域の常緑の広葉樹はこの外にエゾユズリハ、フッキソウ、ヤドリギなどがある。厳しい冬の始り、緑の葉と朱色の実は小さな安らぎと喜びをくれる。冬の陽を受け光合成をおこない、この葉も暖地の照葉樹と同じく、新芽が葉を広げた後に初夏の繁みの中で葉を落とすのだろう。

163 マントの中で

Rhinolophus sp.  近くの廃坑でコウモリを見つけ、研究者に尋ねたら、キクガシラコウモリ類 Rhinolophus sp.ではないかという。驚いた。一度出会ってみたかった。オオコウモリの飼育に係わったことがあるし、アブラコウモリならよく知っている。キクガシラ類はほかのコウモリ類とは眷属を異にし、ひと際存在感のある御面相をしている。いまは狩衣に身をつつんでの冬眠中のこととて寝顔も拝せないが、春を待って、すっぴんの美形と出会いたいものだ。

162 斑猫 ハンメウ

メノコツチハンミョウ シナモン色のミズナラの葉の上に光るものを見つけ、眼を近づけて見たらなんとメノコツチハンミョウ。10月の中島探索会では毎年出会っていたが。カンタリジンという強い成分を持ち、昔から「斑猫」の名で漢方の世界では隠然たる幅を利かせていた。だが分類上のハンミョウは全く別のグループで薬効はなく、成分と名に混乱がある。かつて日本薬局方にも載っていた薬品で、朝鮮王朝時代劇ではストーリーを進めるキーポイントの毒薬として幾度か登場した。