661 クワの実

クワの実初夏の風が吹き渡る林にクワの実を見つけた。陽の透ける葉裏の黒い実はちょうど食べ頃で、甘さとかすかな酸っぱい味が懐かしい。口のまわりや衣服まで赤紫に染めながらも子供たちはおやつ代わりに摘んで食べたが、いまは誰も食べない。樹皮からはものを簡単に束ねるくらいの繊維が得られるし、材質は強靭で道具の柄や、杖として日常使う最上の棒っきれとなる。身近なお宝だったのに。