356 蒼い空

眼近くの家で輓馬が保養している。本当に大きな馬で、人の頭くらいの大きさの蹄を持っている。私を見てくれている。近寄ると顔を持ってくる。優しく穏やかな眼だ。頬を撫で頤を掻いてやる。瞳を動かさず、私の眼をじっと覗き込んでいる。数秒、私の心は洗いざらい見透かされてしまったと思った。眼には蒼い空と有珠山と私が映っていた。あとひと月もすると、この眼にはどこまでも広がるタンポポの原っぱが映るはずだ。