319 蒼い夜に

キタキツネ近くの田んぼの雪の中にキタキツネの足跡が続いている。早朝、6時には雪が降っていた。その時は-15℃であった。市街地からまっすぐに畑に入り、畦道に上がって向うの林に帰っていったのだろう。  茂吉の句に「けだものは食うもの恋いて啼きいたり何というやさしさぞこれは」とある。月齢17.7日のレモンの形の冷たい月の下、今朝のキツネは啼かず考えず背を照らされて、弛まず歩みを続けたことだろう。 昨日も今日も腹が満たされたとは思えない。これはいつものことだが、音のせぬ間の蒼い世界のおはなしだ。