879 やがて北へ

オオハクチョウ遠山には雪が残るが、オオハクチョウの心はすでに春なのだろう、何処か落ち着かない。あとひと月もすると、体に湧きあがる本能に突き動かされ、30羽、50羽と隊列を組んで北へ向かう。一羽が飛んで来て仲間に加わった。大きな鳥だ。「グイッ、グイッ」と、漕ぎだすボートのオールのような、力のこもった羽音だった。繁殖地はシベリア。3000kmもの北帰行が待っている。