1056 翔べなかった日

コクワガタ薪にしようと積み上げていたサクランボの朽木を焚火台で燃やした。翌日、燃え残りの中からすっかり炭化したコクワガタを見つけた。脇には黒焦げの幼虫も。すまん。かわいそうなことをした。おまえたちのこと気にも留めていなかった。凍てついた冬を二回耐え、やっと成虫となったはずだ。虫に落ち度はない。不条理な話だ。飛び立とうとしていた空は高く、吹く風は緑なのに。