991 冬を釣る

洞爺湖で釣る冷えた朝、洞爺湖北岸。シカの足跡をたどって湖岸に下りた。澄んだ大気の中、中島が近く見える。風はない。水際の浅い雪をたどると遠くに釣り人の影が見えた。フライを振っている。遠見だけれど、釣れたのかそうでないのか。そんなことではない。ここでは水の冷たさも時間もすべて止まっていて、この瞬間だけが真実だ。この風景だけを釣果として満ち足りて帰路につけるだろう。