442  常緑のシダ、コタニワタリ

コタニワタリおよそシダらしくないシダで、単葉の裏には褐色で平行な線上の胞子嚢群が並んでいる。固い紙質で厚みのある葉は常緑で北国のイメージと結びつかない。7,500年前に有珠山が山体崩壊して噴火湾になだれ込み、流山地形は小島や半島になり、有珠湾を構成した。入り江を取り囲む林は海水の影響で極端な低温にはならず、このことがコタニワタリの生育を助けているのかもしれない。磯の香と漁網を干す臭気に包まれながら、形のそろった艶やかで見事な葉の群落にしばし見とれていた。有珠湾の入り江の海の生態系は北海道でも特異的に貴重な存在であるが、有珠善光寺付近の植生を含め、海の影響を受けた植物相もまた大切に保護されるべき自然であろう。