334 春いろの影

春の影陽の光が一段と強みを増して、朝の樹の影が明らかになる。この先、木の根もとに雪の窪みが出来るようになると、本当の春近しだ。もうすぐ、枝先の樹の肌が赤く柔らかに色付く。そうなるとしめたもの、芽が膨らみ始める。こんなふうにして何かにつけて春を探し、春を待つ。鳥たちのさえずりが強くなる。雪の下のノネズミ達のトンネルが見えはじめるともうシメタものだ。この嬉しさは南の生きものたちにはわかるまい。