141 名残の意匠

ヤマシャクヤク 洞爺湖の中島で出会ったヤマシャクヤクの実。初夏、半日陰の林で出会う白く柔らかで大きな花弁は、庭の園芸種より幾倍も美しく感じる。過日の中島には、この花で埋め尽くされる場所があったそうだ。特徴のある花柱は袋果となって秋に裂開する。反り返ったマゼンタ色の袋果に載る濃紺の種子と、不稔の未熟種子のカーマインスカーレットのマッチングがひときわ眼を引く。末枯れてゆく季節の中に残された、暑かった夏の日の滲んだ血の一滴。