183 春を待つ

ミズバショウ 洞爺湖の湖岸近くの湿地に、一つだけの萌黄色を見つけた。ミズバショウの新しい芽だった。雪景色の中のくぼみの水たまり、命あるものは何も見えず、何も動かず。樹の枝から落ちた雪片を載せ、淡く青空を映す縮緬皺の薄氷。春はまだ遠いのか、もう近いのか。あらゆるものが動き出し、軟らかな緑色の風が流れる「その季節」をひたすら待っている。