117 森の「オーイ」

「おーい」のミズナラ ここは洞爺湖中島、夜は無人だ。昼間はフットパスをめぐる人たちの声や島へ往復する観光船の音が遠くから聞こえるが夜は静寂そのもの。深い森に夕闇が迫る頃、樹々たちは太い声で話し始める。先ずはこの樹がひとこえ呼びかける。「おーい」。

 口を大きく開いて「おーい」と呼びかけている太いミズナラの古木。中は洞になっていて、この口に顔を入れて「オーイ」とさけぶと「オーイ」と反響する。この森の妖精「オーイ」のミズナラ。葉はふさふさと茂り、まだまだ壮健で樹皮もしっかりしている。しかし、子は無い。種子のドングリも芽を出した若木もみんなシカが食べてしまう。このままでいくとこの樹は一代限り。こんな古木がたくさんある。今夜も叫んでいるよ「オーイ、何とかしてくれー」