69 北帰行

ハクチョウ ハクチョウの群れが行く。毎年、リンゴとサクランボの剪定作業をしながら脚立の上から見送る。啼き交わす声は遥か遠くから、姿も見えない向こうから聞こえてくる。猟犬の群れが獲物を追うような声だ。今日は午前中に四群。首を磁石の針のように北へ向け、精一杯に伸ばし何一つ躊躇することなくひたすら頭の上を通り過ぎてゆく。私だけが取り残されてしまう。連れて行ってくれ。